in hot daysA





「ただいまー…」

「おかえり。…今日は随分とお疲れのようだね」

既に外は真っ暗。時計の短針は九を指している。

「ちょっと捕り物があってね。…ま、司令官殿が出る程のものじゃなかったけど」

肩に掛けた鞄を下ろしながらクライサは言った。夜とはいえ外はまだ暑いのだろうか。その額には僅かに汗が見える。

今日は久しぶりの休み。
朝から家でゆっくりと過ごしていたのが、クライサも、というわけにはいかなかった。
残念ながら彼女の休みは一週間後。早朝に起きて家事を済ませると、彼女は愚痴を溢しつつも司令部へ向かった。

そして今。
夜九時になって、漸くの帰宅。

「あっつー…こんな時間だってのに、外、そよ風すら吹いてないんだよ!?昼は炎天下でホシ追っかけてたってのに…あたしを労る気がサラサラ無いんだ!」

「天候に文句を言っても仕方ないだろう…今冷房をつけるから、ちょっと待ってなさい」

室温はそれほど高くない。それゆえ彼女が帰って来るまでは冷房を入れず、窓を開けるだけにしていたのだが、帰って来たばかりの彼女にとってはそれでは暑いのだろう。
不満を口にしつつソファーに腰掛けた彼女に苦笑し、私は席を立つ。が、

「んー、ありがと。……あ、コレもらうね。喉渇いちゃった」

彼女に背を向けた瞬間聞こえた声に、私は動きを止めた。
コレ?
コレ、というのは、まさか。

「クライサ!」

勢いよく振り返った先の少女が手にしているのは、ローテーブルに置いておいたグラス。氷の入ったそれは、先程まで私が手にしていた物だ。
その中身は、ウイスキー。

「ダメだ!それは酒ーー」

ぐいっと。
ああ、なんて見事なイッキ飲み。………でなくて!!

「クライサ!?」

ダンッと大きな音を立て、氷のみが入ったグラスを机上に置く。彼女は手の中のそれを、割らんばかりに強く握っている。

「…ふ……ふふ…」

「……クライサ…さん…?」

不気味な笑い声を漏らす彼女。
こうなったらもう手遅れだ。

なぜなら。
彼女が酒を飲んで、家を破壊されなかったことは一度たりとも無かったから。




『暑い日で5のお題』
2.冷たい飲み物一気飲み










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