in hot days@
「……何」
真夏日レベルの暑さが東方司令部内に漂う。もちろん外も同様の暑さだ。……いや、司令部内には冷房が設置されているので、本来なら外よりも涼しい筈なのだが。
それはそれとして。
何故このあたしが、司令室内のみんなからの注目を浴びているのだろう。
エドやアル(旅の途中、報告書の提出のために一緒に戻ってきたのだ)もまた首を傾げている。
「……氷の錬金術師君」
「はい?」
一番最初に口を開いたのは大佐だ。何だ、この改まった口調。
「何故ここがこんなに暑いかわかるかね?」
「ううん」
「実はこの建物内の冷房全てがイカレてな」
「へぇ」
「ものは相談なのだが」
「嫌だ」
『相談』の内容なんて、たかが知れてる。暑さに耐えられなくなった大人共が、『氷』の錬金術師であるあたしに頼むようなことなんて、一つに決まってるじゃないか。
「そう言わずに…君なら出来るだろう?この建物内の温度を少し下げて欲しいんだ」
ほら、ビンゴ。
「頼むよクライサ〜」
「お姫!この通り!」
「すいません、お願いします」
部下たちもまた上着を脱いだ姿で、汗だくになって頼んできた。
ちなみに上から、ハボック少尉、ブレダ少尉、フュリー曹長である(ホークアイ中尉は非番、ファルマン准尉は外回り中らしい)。
「……具体的にはどこの室温を下げればいいの?」
空気中の水分を多少凍らせるだけで、その周辺の気温は幾分か下がる。
それほど大変な作業でもないし、汗だくな彼らを哀れに思ったので、あたしは渋々OKすることにした。
「ああ…具体的には、部屋も廊下も階段も、建物内のあらゆる場所だ」
……あぁ?
「今夏、東方司令部では真夏の凍死体験を実施中」
「実施するな!いや、しないでください!!」
「無理言って悪かった!!だから落ち着……ぎゃあぁぁッ!!」
その日、東方司令部は真冬日並みの寒さに襲われたとか。
「大佐が錬金術で扇風機でも錬成すれば良かったんじゃねぇの?」
「「「「…………あ」」」」
『暑い日で5のお題』
1.汗ダラダラ