星に願いを
七月七日。
東の島国では、この日は七夕と呼ばれており、空で離れ離れになった織姫と彦星が年に一度だけ会える日とされているらしい。
「くっだらねー」
エドワードは地面に腰を下ろし、作業に忙しくしている大人たちをぼんやり眺めていた。
ファルマンから聞いた外国の話を司令部の大人たちに話すと、何故かその島国と同じように祭(と言っていいんだろう、この場合)をすることになってしまった。
その国もこの国も祭好きが多いんだな。呆れるほかない。
「はい、エド」
声をかけられたほうに目を向けると、立っているのは予想通りの少女。クライサはエドワードを見下ろしつつ、その手に持つ紙を差し出した。
「…何コレ」
「タンザクっていうんだって。そこに願い事を一つ書いて、あれに吊すんだよ」
そうすれば願いが叶うんだってさ。
笑って続けた彼女の指し示す先では、笹(ここらでは見ない木?だ。先程ファルマンが名前を教えてくれた)を立て、その葉にこの紙をくくりつけている大人たちの姿。気付けば弟も混じっている。
「星に願えば夢も叶うってか?非科学的な…」
「あはは、言うと思った」
彼らは錬金術師。科学者だ。そのような非科学的なものを信じられるわけがない。
「だからさ、ここに書くのは『願い』じゃない」
「へ?」
「『目標』だよ」
そこに書くことで、自分自身に言い聞かせるように。それを、再確認するように。
「おーいクライサーっ!ちょっとこっち手伝ってくれー」
「あ、はいはーい」
笹周りに立つ大人たちに呼ばれ、少女は歩き出す。
「……それにさ」
少し歩いたところでその足を止め、エドワードに振り返った。
「もし…万が一にでも叶ったら儲けもんでしょ?」
「……ああ。そーだな」
お互いに悪戯っ子のような楽しげな笑みを浮かべると、エドワードもまた立ち上がった。
『アルと元の身体に戻れますように。………っていうか絶対戻ってやる!!』