daily life
〜2日目 with R〜
「だから何度言えばわかんのさ!」
「何度も言ってるだろう!君の言い分はおかしい!」
騒がしい司令室には今、残念ながら二人を止めようとする人物はいなかった。
普段なら必ず止めに入るホークアイ中尉は非番だし、慌てながら効果の無い宥めの言葉を告げるフュリー曹長は部下に呼ばれていったし、止められるわけがないと理解しているブレダ少尉とファルマン准尉は外回りに行ったし。
要するに司令室にいる人物はこの二人以外には、俺ただ一人のみということだ。
「そこまで言うことないでしょ!あたしはただ…」
さて、先程から続くこの言い合い。これは俺の上司二人によるものだ。
「『ただ』なんだね。言ってみたまえ」
この司令部の司令官、ロイ・マスタング大佐。
「ただ自分の意見を述べただけでしょ?なのに『おかしい』呼ばわりは酷いよ」
その妹分、クライサ・リミスク少佐。
この言い合いの発端を運んできたのはこちらだ。
そもそも、これの発端となったものとは。
「あたしは単純に『イチゴは最後に残したい』って言ってるだけなのに…」
「こちらだって『イチゴを先に食べる』と答えただけだろう」
……というわけだ。
先程クライサが外回り中にケーキを貰ってきて、俺たち三人で先に休憩をすることになったのだが、彼女がショートケーキを食べながら
『大佐はイチゴは先に食べる派?後に残す派?』
なんて尋ねたせいで、こんなことになってしまったのだ。
「もしもイチゴが酸っぱいものだったらどうするんだ!せっかく甘いケーキを食べた後でも、後味が悪くなってしまうんだぞ!」
「だってイチゴ好きなんだもん!好きなものは最後にとっておく派なんだからしょうがないでしょ!」
ああ、心底どうでもいい。
「おいハボック!ぼーっと見てないでお前も言ってやれ!」
「へ!?俺っすか!?」
「少尉はもちろん後派だよね?楽しみは後にとっておきたいでしょ?」
俺を巻き込まないでくれ。どっちに味方しても痛い目見るだけだろ。
「ハボック!」
「少尉っ!」
全く困った兄妹だ。毎度毎度些細なことで喧嘩するのはやめてくれないだろうか。
上司二人の厳しい視線の中、俺はただ途方に暮れるのだった。