(赤青・赤星/クライサとゼロス、アカとレイヴン)





「あのさぁ、」

ふと気になったことを尋ねようとクライサが口を開き、他三人が彼女に振り返った。少女の視線はその中の一人に向いている。

「ゼロスって、なんで風属性の魔術ばっか使うの?」

その質問の対象は目を丸くしたが、アカは彼女の疑問に同意するように頷いた。
ゼロスは一応多属性の魔術を使うことが出来る。なのに最近の戦闘ではウィンドカッターやエアスラストなどの風属性しか使っていなかった。別に風属性が弱点の敵ばかりと闘っていたわけでもないのに。

「それに回復系も。ファーストエイドで足りるのに、わざわざヒールウィンド使ったりさ」

「そういやレイヴンもそうだったね」

アカが目を向けた先で、レイヴンが気まずそうに顔を歪めた。ゼロスも似たような表情になり、クライサが首を傾げる。

「ウィンドカッター、エアスラスト、アリーヴェデルチにハヴォックゲイル……ま、あんたの場合は元々が風属性メインだけどさ」

「言われてみれば、レイヴンって最近魔術ばっか使うよね。前は弓メインだった筈なのに」

「ゼロスもそうだね。前はわりと前線で剣振ってたと思うんだが」

「…あー」

「…ええとねぇ…」

二人の視線を受けて目を逸らした男たちは、やがて観念したように口を開いた。まずはレイヴン。

「別にね、いつでも使ってるわけじゃないのよ。戦闘メンバーによって使い分けてるわけだし」

「ああうん、確かに」

レイヴンが戦闘に出る時は、シバルリーの関係で女子がメンバーに入ることが多い。最近ではジュディスやリタか。そういえば、ユーリやラピードらと組む時は、あまり魔術を使っていなかった気がする。
同じく女性陣と戦闘班になることが多いゼロスが、次いで口を開いた。

「ほら、コレットちゃんやマルタちゃんの服の裾って結構ヒラヒラしてるだろ?ジュディスちゃんの腰布とか特に」

スカート捲りが狙いかこの野郎

でれでれにニヤけた頬にクライサの鉄拳がめり込む。数メートル吹っ飛ばされたアホ神子を眺めながらアカは溜め息をつき、レイヴンへと視線を向けた。

「どうせあんたも同じなんだろう?」

「ちょ、俺様は違うわよ!?戦闘班のバランスや敵の能力を考えて、より効果的な戦闘方法をだな、」

「レイヴン。耳動いてる」

あくまで穏やかな彼女に嘘を見破られ、顔を青くした中年男は逃走をはかる。しかしアカもクライサもそれを追おうとしない。前者はまだしも、後者が自分を逃がすとは思えない。レイヴンが疑問に思うと同時に、彼の行く手をいくつもの影が阻んだ。そうか、ここは地獄か。

「よかったね、レイヴン。美女たちに囲まれるなんてそうそう出来ない体験だよー」

「ま、半殺し程度で済ませてもらえることを祈っとくんだね」





019:風
女の鉄拳はかくも強し





くだらない話
【H21/11/23】





index




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -