(ちょこっとTOV)
今日中に抜けられると思って入った森は意外に深くて、まだ暫く歩き続けなければならないらしい。
ちぇ、ミスった。全員が上記のように考えていたので、誰かに責任を押し付けようとはしなかった。
とりあえず辺りも暗くなってきたので、完全に闇に包まれる前に野宿の準備をすることにした。
比較的魔物の少ない森ではあるけれど、見張りを無くすわけにはいかない。今日の当番はあたしとユーリで、数時間おきに交代することにしていた。
「ユーリ、交代」
「お、もうそんな時間か」
欠伸を噛み殺しながら、焚き火のそばに座っているユーリに歩み寄った。
と、その隣の影に気付く。
「あれ、ラピード?」
「眠れないらしくてさ。二時間近く前からここにいるんだよ」
「なんか嫌な夢でも見たのかね」
伏せたまま動かない犬を挟むように、ユーリの隣に腰を下ろした。
差し出されたコップを受け取りながら、柔らかい毛に包まれた背に片手を伸ばす。いつもエステルからは逃げるけれど、あたしの手は避けないでくれた。かと思うと、ラピードは体を起こしてあたしの膝に乗り上げてきた。うわぉビックリ。こんなにスキンシップとられたの初めてだよ。
「母親だとでも思われてんじゃねぇのか?」
「あたしはまだ15だ」
「ツッコミどころがおかしい気がするんだが」
「気のせいだよ」
湯たんぽ犬
(ちょっと待って、これベッドのぬくもりって言うより…)
(…ペットのぬくもり、か?)
(ワフッ)