(長ユメ/ロイ)
珍しいものを見た。
「リオン」
机に突っ伏した茶髪に、溜め息混じりの声が出る。
規則的に上下する肩。枕にした腕の下には厚めの本。読書の最中に眠ってしまったことは明白だった。
「リオン、起きろ」
「…んー…?」
今日はほとんど仕事も無く、彼はまだ休憩時間中の筈だから寝ていても構わない。司令室には今自分たち二人しかいないから、仕事の邪魔になる心配も無い。
しかし、インナー姿のままこんな所で眠っていては、風邪を引くのは確実だ(射撃訓練でもしていたのだろうか。せめて上着ぐらいは着てくれ)。
軽く肩を揺すると、ゆるゆると顔を上げた彼は子供のような仕草で目を擦り、小さく唸りながらこちらを見上げた。寝ぼけているのだろうか。とろん、とした目がじっとこちらを見つめている。
「……たいさ」
「寝るなら仮眠室に行きなさい」
「…かみんしつ…」
完全に寝ぼけているらしい。
盛大に溜め息をつくと、腹の辺りに小さな衝撃を感じた。
「……」
再び眠りに落ちた彼が、人の腹に頭を預けている。よくそんな不安定な状態で眠れるものだ。
仕方ない。
仮眠室まで運んでやるか。
春眠暁を何とやら
(…寝顔は17歳に見えないな)