(合縁/ラビ)



頬を撫でる風は冷たい。
けれど心を落ち着かせてくれて、足を動かす気にはならなかった。

「ラビ」

背後からの声に振り返る。
夜闇にすら映える空色の髪を揺らして、両手にマグカップを持った少女が歩いてきた。
片方を差し出されたので素直に受け取ると、少女は満足そうに笑って隣に並んだ。

ベランダの手摺に肘を置いて、温かいココアに口をつける。見上げた月は真ん丸だ。
チラリと隣を窺うと、彼女も暗い空を見上げていた。

「夢、見た」

「……何の?」

「昔の」

少なくとも、幸せな夢ではなかったのだろう。見下ろした少女の顔に表情は無かった。いつもの、貼り付けたような笑みでさえも。

「…ラビも?」

「……ああ」

「そっか」

喉に流し込んだココアは、目が覚めるほど甘かった。





うさぎ月夜

(眠れない夜ぐらいは、隣にいてあげる)








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