(FA/兄弟)
「二人とも、調べ物の進み具合は……っと?」
資料室の扉を開けてすぐ、目に入ったのは見慣れた鎧の姿。アルフォンスは、彼女が部屋に足を踏み入れると同時に、しぃ、と人差し指を立てる。首を傾げると、彼はその指で自分の背中を指した。
「……ああ」
床に座ったまま、鎧の背中にもたれて眠るのは彼の兄だった。強い光の目立つ金の眼は伏せられ、幾分幼く見える寝顔を晒して熟睡している。
最近寝不足だったみたいだから起こさないであげて、という弟の言葉に頷いて、眠る彼の前に膝をついた。
右手には、油性マジック。
キュポン、と軽快な音を立てると、肩越しにこちらを見た鎧が慌てた様子になった。
「ちょっ、クライサ!?」
「あー大丈夫。起こすつもりはないから」
「え、いや、でも…」
「気にしない気にしない」
猫髭男爵
(あたしの前でお昼寝なんかするからだよ)