(クライサとリオンとエド)





リオンは寒さに弱い。いつもクールな態度で上司や同僚たちに冷たく鋭すぎるツッコミを入れるくせに、本人は寒いのがとにかく嫌いだ。

「…むいさむいさむいさむいさむいさむ…」

「クライサ、リオンが変だ」

「うん、変だね」

彼と共に市内の見回りに出たのは正午を少し過ぎた頃。それから暫く歩いているが、リオンはずっとこんな調子である。
確かに今日は普段より少し肌寒いと思うけれど、そんなに過剰な反応をするほどではないだろう(クライサ自身が寒さにかなり強いということを抜きにしても)。

「ほら、もう少しで終わるんだから頑張んなよ」

「……おー…」

「そんなに寒いんだったら上にコートでも着てくればよかっただろ」

「や、司令部にいた時は着てたんだよ。けど大佐が…」

リオンの右隣を歩くエドワードの声に、彼ではなくその左を行くクライサが返した(エドワードは司令部に行く途中だったらしく、先程メインストリートで会ったのだ。こちらも後は戻るだけなので、せっかくだし三人で向かうことにした)。
子どもは風の子と言うだろう、とにこやかにリオンのコートを剥いで彼を廊下に放り出した上司のドS顔が忘れられない。室内でのデスクワーク中ですら寒さに震えていたリオンを見ていながらの行動に、内心で鬼畜生と呟いたのはクライサだけではない筈だ。

「さむいさむいさむい…」

「リオン、うるさい」

「しかたねぇだろ寒いんだから。ったく、なんでこんな日に外回りなんか…」

「あーもう、うっさいなぁ!」

文句の絶えない少年の、擦り合わせている両手の片方をとった。指先まで冷えきった左手をぎゅうと握って、きょとんとした顔の彼の向こう側にいるエドワードと目を合わせる。こちらの意図を読み取ったエドワードは、にやりと笑むともう一方の手を握った。

「おい」

「はいはい、さっさと司令部に帰るよー」

「行くぞーリオン」

「…ったく」

仲良く手を繋いで、三人横に並んで歩く。向かい合って並ぶ店々の主人や通行人たちに微笑ましそうな笑みを向けられ、空いた手を振るというおまけつきで笑顔を返す。
自然と合った歩幅。徐々に温かくなる手のひら。そっと見上げた彼の文句を言わなくなった口は、ゆるく弧を描いていた。





017:手を繋ぐ
とある平和な昼下がりの話





【H21/11/03】





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