(クライサ夏バテ中)





「夏だなぁ…」

暑さも厳しくなり始めた七月末。一般学生として暮らしていた頃は、この時期はちょうど夏休みに入ってすぐといった辺りだったろうか。宿題なんかクソくらえ、な幼馴染みに連れ回されて遊びまくるのが、リオンの夏の過ごし方だった。最終日に溜まった宿題の手伝いをさせられるのも、毎年のことである。
この世界では、学生たちほど長い夏休みを楽しむことはほぼ百パーセント不可能だ。何故だか少尉とかいう地位に就いてしまった身、元より期待などしていない。
晴れ渡った空、蝉の鳴き声が誘うように響く夏の午後。何が悲しくて屋内に引きこもって書類処理なんぞしなくちゃならんのか。

「よう。頑張ってんな」

「エックスフィート大尉」

今回はちゃんと仕事で東部に来たらしいリオが顔を見せたので、ペンを置いて小休止することにした。ハボックや部屋にいた他の者も同じことを思ったようで、皆仕事を中断して彼に挨拶をしている。
その様子を横目で見ながら、リオンは隣の席の少女の肩をつついた。顔を横に向けた状態で机に伏せっている。反応が無い。屍のようだ。

「そんなに暑いのが嫌なら、いっそ北に出張にでも行きゃいいのに…」

そんな彼の呟きも聞こえていない氷の錬金術師は、生気の無い虚ろな目を半開きにして、机に頬を引っ付けたまま身動きの一つもとらない。微かに開いた唇からは熱い息が溢れるだけで、ここ数時間は声を出すことすらも無かった。冗談抜きで脱け殻にしか見えなくなってきた。
この半分死体があの氷の錬金術師だと言われて、一体どれだけの人間が納得出来るだろうか。全国の悪党グループさーん、今なら東部の暴れ馬も瞬殺可能ですよー。

「おー、こりゃ盛大にだれてんなぁ」

面白半分呆れ半分に苦笑していると、リオが彼女のそばまで歩いてきてそれを見下ろした。どこか残念そうな表情の彼に、どうかしたのかと尋ねてみて、その後すぐやめておけばよかったと思った。

「上気した頬、潤んだ目、若干呼吸荒くして上目遣いってのを期待してたからさ」

「……へぇ」

「それで棒アイスでも舐めてくれりゃ俺、色んな意味で元気になっちまうよ」

砂漠で野垂れ死ねばいいのに

「(リオンも言うようになったなぁ…)」





014:カラッポ
得意の錬金術はどうしたよ





リオが下品
【H21/07/26】





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