本物のエルリック兄弟は、仲間と共に町を出る。その偽者だったトリンガム兄弟は、真実の名前を掲げて町に戻る。
こうして、ゼノタイムでの偽者騒ぎは幕を閉じたのだった。
「またいつか行こうね、ゼノタイム」
なんとか最終列車の時間に間に合ったエドワードたちは、他に乗客のいない車両に乗り込んだ。
窓の外、ゼノタイムのある方角を眺めながら言ったクライサの言葉に、エドワードはチラリと目を向ける。
「なんか『今度会った時には話したいことがあるから』とか言われたし」
「は!?お前そんなこと言われたのか!?」
「うん」
別れ際、真剣な表情をしたラッセルに告げられた言葉だ。首を傾げながらもクライサは頷いたのだが。
「兄さん、もしかして…」
「ああ、ラッセルの奴…」
クライサのこと、好きなんじゃないか。
本人に聞かれないように小声で交わした会話に、リオンが溜め息をつく。
「なんだお前ら。今頃気付いたのか」
「「!!」」
あんなに分かりやすかったのに。リオンは、他三人の鈍感さに再び溜め息を吐き出した。
「なんだよリオン、知ってたんなら早く言…」
「ちなみに、知ってるか?ラッセルの奴、あれで、アルフォンスと同い年なんだぜ」
その一言にはエドワードたちのみならず、通路の反対側の席に座っていたクライサも驚きの声を上げた。あれで、自分たちよりも年下なのかと。
エドワードよりずっと背が高く、大人びた様子の彼。予想では19歳ぐらいだと思っていたが、よもや14歳だったとは。
「俺と同じくらいだと思ってたよ。三つも下だったんだな」
落ち着き払ったリオンとは正反対に、信じられないと目を見開いているのはエドワードとクライサ。
「「う……嘘だあぁぁーーーーーーっっ!!!!」」
列車内に、二つの絶叫が響き渡るのだった。
END.
【H18/12/12〜H19/04/05】