「リオン」

倒れた男を見下ろしていた少年は、かけられた声に振り返る。そこにいたのは、空色の少女。

「随分と不機嫌だね」

同じように男を見下ろし、呆れた様子で再度少年を見上げる。それに対して、リオンは少女に笑みを向けた。

「まあな。腹立ったから」

反省する様子の無かった相手に、ついつい手が出てしまった。役人が来ることを伝えるだけで済ませるつもりだったのに。

「でも、ま」

「うん?」

「いいだろ?殺したわけじゃないし」

男の顔のすぐ横。地面に埋まった弾丸を指差し、リオンは意地悪く笑った。

「…まーね」

あまりの恐怖に気を失ったマグワールを哀れに思いながらも、クライサは彼同様に笑みを浮かべるのだった。





陽が傾いてきた町外れ。風がそれほど強くないせいか、土煙は舞い上がっていない。澄んだ空気に夕日が輝いていた。

「町の者が誤解して色々迷惑かけたな」

ゼノタイムを出るため、エドワードたち四人は駅に続くレールの上に立っていた。金鉱の町と呼ばれていた頃には、トロッコが忙しなく往復していたこのレールも、今ではすっかり錆び付いてしまっている。

「いや、誤解されたのはこいつのせいですから、お気になさらず」

町民を代表して謝罪したベルシオに、エドワードはニヤニヤしながらラッセルを指差す。

「だから謝っただろう」

「足りねーな」

数十回以上謝らせ、それでもまだ足りないと言うエドワードに、クライサとリオンは呆れたように溜め息をついた。

偽名の件は、本来なら裁判沙汰になるところだが、エドワードもアルフォンスもそこまでするつもりはなかった。
…代わりと言ってはなんだが、エドワードはラッセルに、ここまで歩く間に肩を揉めだのトランクを持てだのといった要求をしまくっていたが。

「で、本当にいいの?町の人に口を利いてあげてもいいんだけど」

クライサは心配そうにラッセルを見る。嘘をついていたことを告白すれば、ただでは済まないだろう。

「いいんだ。町の人から下される罰は受けるつもりだ。全てはそれからさ」

「そっか」

覚悟を決めたかのようなラッセルの表情。それを見たクライサは、安心したように柔らかく微笑んだ。









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