クライサの拳によって頬を殴られ、気を失ったマグワール。意識を取り戻した彼の目に映ったのは
「お。やっと起きたか」
楽しげなリオンの顔と、燃え盛る研究室だった。
最終章
「な……な…」
マグワールは大きく目を見開き、空に舞い上がる火の粉を見つめている。ラッセルたちが『石』の研究をしていた筈の、そこが燃える様子を。
「アンタが姫たちと戦ってる間に、アルフォンスとフレッチャーが火をつけたんだ」
もう、そこで研究する気も、必要も無いから。
「ラッセルたちは、これで晴れて自由ってわけだな」
「…く…くく…!研究室を焼いたくらいで何を…」
自分がいる限り、彼らに自由なんて訪れない。持っていた紅い石を掲げると、マグワールは笑った。
だが
「自由なんだよ」
少年の声が耳に届き、次いで銃声が響く。見れば、リオンの手には一丁の拳銃。
紅い石を持っていた筈の右手からは、サラサラと砂のような物が落ちていく。銃弾によって貫かれた『石』が、粉々に砕け、崩れ落ちたのだ。
「なっ…石が…!!」
慌てるマグワールの胸ぐらを、リオンの左手が掴む。座り込んでいた彼の体を上に引き上げるようにして、間近から少年は言ってやった。
「裁かれるんだよ、あんたは」
クライサとラッセルがマグワールと戦っていた時、アルフォンスとフレッチャーが研究室に火をつけた時、エドワードと行動していたリオンは、軍に連絡を取っていたのだ。
「今に役人があんたを迎えに来るよ。心の準備でもしといたほうがいいんじゃねぇの?」
強気な笑みを見せ付けると、その胸ぐらを掴んでいた手を放す。マグワールは背中から地面に落ち、呻き声を上げるが、すぐに気色の悪い笑みを浮かべた。
「ワシを裁くのなら、ワシに協力したラッセルたちもただでは済まんぞ?」
「……」
彼の言葉に、リオンが動きを止める。その様子を見れば、マグワールの笑みは更に濃くなった。