格子越しに会話を交わすエドワードたちを、反対側の牢の格子に寄りかかりながらリオンは見ている。そこにクライサの姿はない。

「ナッシュ・トリンガムは、お前の親父さんなんだってな」

「…………」

「軍の研究施設で働いてたんだって?あそこに入るには、かなりの知識が必要だ。親父さん、凄かったんだな」

ラッセルが錬金術を研究出来るほどの知識を持っていたのも、フレッチャーが錬金術を使えるのも納得がいく。

「ラッセル、お前、親父さんみたいになりたかったんだな」

エドワードが言うと、ラッセルは長い長い溜め息をつき、疲れたように背中を壁に預けた。そしてそのまま、父のことを話し始める。

ナッシュは、身体があまり丈夫ではなかったけれど、錬金術については誰にも負けないくらいの知識を持っていた。錬成は得意でなかったようだが、研究は誰もが認めていた。
『錬金術師よ、大衆のためにあれ』の言葉通り、困っている人を錬金術で助けることが出来るなら力を貸してやりたいと言っていたそうだ。

「もっと研究をしたいって、軍の施設に入って有名な人の弟子にもなったらしい」

しかし、そこのやり方にとてもついていけない、と逃げ出してきたのだ。それからは、家族揃って毎日逃げるようにして暮らしていた。
父は凄く怯えており、錬金術なんてもう嫌だと、ラッセルたちにも錬金術は絶対に使うなと言った。
母は、疲れて死んでしまった。それからすぐ、父がラッセルたちに見せたい町があると、自分の生まれた故郷に連れて行ってやると言った。
それがこの町、ゼノタイムだ。

「様子を見てくるから別の町で待ってるよう言われたんだ。…でも、帰ってこなかった」

フレッチャーも思い出したのか、悲しそうな顔をしている。逃げる生活、バラバラになった家族。辛い思い出も多いだろう。

「…それでここに来たのか」

「父さんからの葉書に、ここで働くと書いてあったから来たんだ。いい研究所があって、そこで働けばもう追われることはないって。そしたら迎えにくるって」

今、父はきっとまたわけがあってここから逃げ、隠れているのだと思う。だから父が望んでいたように、父が帰ってきたくなるように、緑の町に戻したかった。









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