「ラッセルたちの正体がバレたぁ?」
クライサが上げた声に、リオンは黙って頷く。その視線は、彼らから離れた位置で警備員と会話を交わすエドワードたちへ。
昨夜の件で迷惑がかかってはまずい、とエドワードたちはベルシオの家ではなく、町から離れた場所で野宿していた。
朝になって、もしかするとマグワールに追われるかもしれないと危惧していた彼らの元に、警備員が一人やって来たのだ。
話を聞けば、彼はエドワードたちを捕らえに来たのではなく、迎えに来たのだという。
「偽者騒ぎで迷惑をかけたから、是非館に来てゆっくりしてくれってことらしい」
偽者だとバレてしまったラッセルたちは地下牢に捕らえられているそうだ。
「ふーん…」
昨夜感じた予感は、コレか。一つ溜め息をつくと、クライサは立ち上がり足を踏み出した。
第六章
マグワールの館。
一度ラッセルたちを訪ねたことのあるクライサとリオンとは違い、エドワードとアルフォンスは門から堂々と入るのは初めてだ。
彼ら四人を迎えたのは、館の主であるマグワール自身。エドワードたちはこの館に二度も侵入し、彼の話も町の者から聞いていたのに、本人に会うのは初めてだった。
「ようこそいらして下さいました、エドワード様、アルフォンス様。……ええと、後ろのお二人は…?」
「クライサ・リミスク。そちらの鋼の錬金術師さんと同じ、軍の狗ですよ」
「リオン・アサヌマ。見ての通り軍人ですけど、『石』や金の錬成については上に報告する気はないんで、ご安心下さい」
クライサとリオンも、エドワードたちと同じくマグワールに会うのは初めてだった。簡単に自己紹介をすると、マグワールは馴れ馴れしいまでの笑顔を浮かべる。
「そうですか、ではお二人もどうぞこちらに。この度はご迷惑をおかけしたようで申し訳ない。お詫びと言ってはなんですが、お食事をご用意致しましたので」
自ら食堂へと案内するマグワールの後ろで、エドワードはアルフォンスに小さく耳打ちする。
「…研究に誘うつもりだ」
「だね」