どうして、嘘をついているの?

「ここで研究するには、それしかなかっただろう」

どうして、研究してるの?

「あの人が目指したものを継いだだけだ」

どうして、自分の力だけで錬金術を使わないの?

「あの人が使うなと言ったからだ」

あの人のためにやるのが、幸せなの?

「俺は満足してる」

だったら

「どうして、そんなに苦しそうな顔するんだよ!」

フレッチャーは震える声で叫んだ。

「兄さんは、父さんじゃない!!」

父は、確かに凄かった。フレッチャー自身も錬金術師として尊敬している。父に憧れて始めた錬金術に、自分たちは本気になっていたではないか。

なのに、父が辞めろと言ったらあっさり辞めてしまった。

父がこの町を復興させるために目指していたものを知り、研究室に入るため嘘をついた。父が反対していたからと言って、必要な錬金術さえ『石』という言い訳がなければ使わない。

「兄さんは、父さんの歩いた道を辿ろうとしてるだけじゃないか。どこにも兄さんの意思なんてない!」

父は国家錬金術師の弟子になるほどの力があったのに、突然辞めてしまった。なのに、この町でまた研究をし出した。きっと父にも何か事情があったのだ。それをそのまま辿って欲しいなんて思っていない筈。

「…さっき錬金術を使ったことで父さんに怒られるなら、僕はちゃんと言うよ」

自分たちが利用してしまった人にこれ以上迷惑をかけたくなくて、使った、と。
自分はいつか立派な錬金術師になりたいから、これからも使い続ける、と。

「……」

ラッセルは、じっとフレッチャーを見ている。怒鳴られるだろうか、殴られるだろうか。だがフレッチャーは眼を反らさなかった。
兄を止めるのは、他の誰でもなく、弟である自分の役目だ。
フレッチャーは真っ直ぐ兄を見つめる。アルフォンスとの会話の中で得た勇気を、胸の内に感じながら。









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