(FA/エド)



※FA第20話付近のお話





「……どうかしたか?」

じっと見つめてくる空色から目を逸らし、頬を掻きつつ尋ねてみた。
クライサは「別に」と呟くように言うが、視線を外す様子は無い。穴があく程見つめるってのはこういうのを言うのか。

最近、気付くとクライサがこちらを見つめているということがやたら多い。以前はこんなことは無かったのに。
何か用があるのかと尋ねても、返事は毎回同じ。『別に』。どうしろって言うんだ。

「……ずるい」

「へ?」

いつも通りの返答で終わるかと思ったら、今回は違った。続いた言葉に何事かと顔を向ければ、迫っていたのは重さの載っていそうな拳。慌てて避けて後退ると、拗ねた顔をしたクライサと目が合った。
いきなり何をするんだと問う。が、噛みつくように返された言葉は答えには程遠かった。

「エドばっか伸びやがって!ずるい!!」

はあ?
突拍子も無い台詞に呆気にとられているうちに、一気に間合いを詰めてきたクライサの拳が顎を狙ってくる。それが届く前に左手で受け止め、追撃を繰り出さないうちに飛び退った。ここで攻撃を仕掛けたら、おそらく本気の戦闘になってしまう。

「ほら!今のだって、前はちゃんと決まってた筈なのに!」

…結構酷いこと言ってないか?
当てる気満々できたと聞こえる(多分、実際その通りだ)。

「なんでエドばっか背ぇ伸びるの!?豆のくせに!」

「誰が豆だ!!…って、え?」

そこで漸く、以前からの視線の意味を理解した。なるほど、そういうことだったのか。
言われてみれば、以前はそれほど差が無いと(認めたくないが)思っていたクライサの身長が、今はかなり低くなったように思える。まあ、オレの背が伸びただけだろうけど。
同じコンプレックスを持つ者とすれば、確かに一方の背だけが伸びるというのはかなり悔しいものだろう。…だろうけど、オレにはどうしようもないし。

何と声をかけたものかと迷っていると、クライサがちょいちょいと手招きをした。首を傾げつつ近寄って腰を曲げる。相手の口の高さに耳を持っていってやろうとした優しさからの行動だというのに、

「ごふぅ!!」

クライサの奴はあろうことか、人の頬に全力の右ストレートをぶちあててきやがった。そして崩れ落ちたオレを放って、ズカズカドスドスと歩いていく。
後でどんな仕返しをしてやろうかと思ったがーー

「エドのばか」

去り際に一度だけ振り返ったクライサの言葉に、怒りが一気に引いてしまった。





011:君と僕との距離
アンタの背中が遠すぎるよ





エド随分背伸びたよねって話
【H21/06/19】





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