どれほど探しただろうか。
本物どころか、その存在さえも不確かな『石』。
これが完成品でなくとも、一歩でも近付ける何かを秘めていると思うだけで、喜びに叫び出しそうだった。

「……?」

この部屋に研究資料がある筈だ。エドワードは机の縁に手を当てて滑らすが、引き出しはついていない。部屋には机一つしかなく、棚らしきものは見当たらなかった。

「さっきの部屋じゃないの?」

「いや、あっちの部屋にある資料ってのがどうもおかしくて…」

こちらの部屋にもないなんて、おかしい。エドワードは紅い液体を睨みつけた。

「…こいつの研究資料さえあれば、少しは『石』に近付けるのに…」

『紅い液体』
それは、賢者の石の研究を相当極めている錬金術師の資料や文献からよく出てくる言葉だ。石を作る際に出来る副産物なのか、錬成方法が違う別物なのか。はたまた、これを固めると『石』になるのか。
本物を見たことがないため何とも言えないが、エドワードはこれを『石』とは別物として捉えている。だが、ヒントは秘めていると思われるのだ。

「ラッセルの持ってた欠片が『石』だとしたら、その過程でこの液体が残っただけかも」

「でもさ、この部屋にあるってことは隠したいほど重要だったんじゃない?」

「そうだよな…ってことは、この液体から『石』を作ったのか?」

「そのほうが合点がいくね」

だが、研究資料が無い。失敗作とは言えあっても良さそうなのに、だ。

「ラッセルが持ち歩いてるとは思えないんだよな」

この研究室に残された痕跡から見て、何かがおかしいと感じていた。何が、とは判別し難いのだが、肝心の部分がぽっかりと抜け落ちているような気がする。

そこまで考えて、二人は同時に目を見開いた。

「そうだ!このやり方が変なんだ!」

研究を進めて行く過程が、すっぽりと抜けているのだ。『紅い水』を精製するための、一番肝心な材料と、それを合わせる過程が全く無い。
つまり、『紅い水』がどのようにして出来上がったのか、その過程を研究している。この『水』から材料を選別しようとしているのだ。

「基本の材料もその過程も残されてないんじゃあ、研究は失敗だ」









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