その頃、話題の二人組は予定通りマグワールの屋敷へとやって来ていた。
三メートルほどある塀に、エドワードの頭を足場にして軽々と飛び乗ったクライサがワイヤーを下ろし、文句を言いながらもエドワードがそれを辿り後に続く。
塀の内側に降りると真っ直ぐ研究室に向かい、扉に耳を当てた。ラッセルたちも今夜は寝ているらしく、館はシンとしている。

「どうやって開けるの?扉を作ると錬成反応でバレるでしょ」

周りを窺うクライサに、エドワードは不敵な笑みを浮かべる。

「これ、なーんだ」

「?」

眼前に出された一本の鍵。それを目にし、何かに気付いたのか、少女は声を上げた。

「……あ」

「昼間ラッセルのポケットから頂いたのさ」

自慢げに言うエドワードに対し、クライサは呆れたような、複雑そうな表情だ。

「……随分と手癖が悪くなったみたいだね」

「器用になったって言えよ。さ、開けるぞ」

そっと扉を開けると、二人は中へと侵入を果たした。予想通り、研究室には誰もいない。
ビーカーやフラスコが大量に陳列され、大きな炉の前には蒸気で満ちたケース。そこに液体の入ったフラスコが並べられ、一定の温度で保たれている。

「これだけの設備がありゃ、四六時中経過を見てなくても平気だよな。研究費もかかるわけだ」

大量の紙に殴り書きされたメモや、重ねられている書物にざっと目を通す。
エドワードとクライサは、双方国家資格を取得するほどの実力者だ。錬金術の知識は人並み以上に持っている。ある程度なら、メモや作業の様子などから同業者として研究の進め方の予測がついた。

「あらら、随分無茶な研究もしてるみたいだね」

一冊のノートをエドワードに見せる。そこには強引かつ危険なやり方を選択しての、『石』の錬成方法が書かれていた。結果がどうなったかは記されていないが、代わりにノートの大半を汚している血痕が結末を語っている。

「……そうとう、焦ってるな」

エドワードは壊れたまま放置されている薬品棚を見上げた。片付ける暇すら惜しんでいる、その様子が見て分かる。
そのままゆっくりと部屋を見回すと、エドワードは集中し出した。その邪魔にならないよう、クライサは黙って彼の様子を見守る。









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