(長ユメ/ロイ)



※CP色強





昨日から体がだるくて、少し頭痛がしていた。喉も痛かったので、こりゃ風邪だなとぼんやり思っていたのだが、やはりそうだったらしい。
今日までの書類をさっさと処理して(元々少なかったので比較的簡単に終わった)、定時まで休もうと仮眠室を借りることにした。薬は飲んだからだいぶ楽になった。……なった…の、だが。

「……何してんだよ」

意識が靄がかってきた頃、ふと瞼を持ち上げるとベッドの脇に立つ人物を見つけた。大佐だ。俺の掠れた声に苦笑で返すと、ベッドの端に腰を下ろした。

「見舞いのようなものかな」

「仕事は」

「心配いらないよ」

即答が怪しい、と思って顔色を窺うが、どうやら本当らしい。まったく、普段もそのぐらいのやる気を見せてもらいたいものだ。

「誰かさんは、風邪を引くと途端に寂しがり屋になるからな」

「へー、誰だろうな」

顔が熱くなるのを感じて、大佐に見られないようにと反対側に寝返りをうつ。背後で笑う気配がした。やっぱりバレたか。

少しの間、互いに黙ったままでいた。他に利用者のいない仮眠室はしんと静まりかえっている。俺たちの息遣いと身動ぎによる衣擦れ、ベッドの軋む、些細な音だけがやけに響いた。
先程までうとうとしていたというのに、一向に睡魔が訪れようとしない。気まずい。大佐の溜め息が背後で聞こえ、微かな肩の震えを抑えられなかった。

「リオン」

こちらを向けと言うように名前を呼ばれたので、のろのろと仰向けに体を動かした。視線が合う。大佐は苦く笑って、俺の額に手を当てた。ひやりとして気持ちいい。

「私のことはいないものだと思って、ゆっくり休みなさい」

「…無茶言うな」

そんなこと言うぐらいなら出ていきやがれ。そういう意味を込めて睨み付けると、大佐は今度は困ったように笑った。

「……仕方ないな」

「仕方なくねぇよ」

「では、私は司令室にいるとするよ。何かあったら呼びなさい」

はいはい、と軽く返そうと思ったら、それより早く大佐の顔が近付いて口を閉ざした。反射的に目を瞑ると、額に少しかさついた、けれど柔らかくあたたかい感触がした。……まさか。
はっとして目を開ける。もう大佐はドアへ向けて歩き出している。が、首だけで振り返り、挑戦的に笑いやがった。コノヤロウ。

結局大佐が出ていった後も、顔の熱さを感じながら、一睡も出来なかったとさ。





010:ウィルス
風邪なんかより、あんたのほうがよっぽど質が悪い!





はじぃ。
【H21/06/19】





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