「良かったのか?」

マグワールの屋敷を後にし、町の中を歩き続けて暫く。前方を進む少女に、リオンが問い掛けた。
是非見てくれ、とラッセルにより頼まれた、賢者の石の精製過程。それをクライサは、一切の口出しの余地も与えずに断ってしまったわけだ、彼女とて錬金術師、それも賢者の石を探し求めている兄弟と共に旅しているのだ。あんなに簡単に断ってしまって良かったのだろうか。

「いいんだよ」

確かに、研究過程を見せてもらえば賢者の石の精製方法を知ることが出来るかもしれない。手掛かりを得られるかもしれない。だが、

「言ったでしょ?あたしはエドたちの仲間だって」

仲間だから、断ったのだ。目的に近付く時は、その手掛かりを得る時でさえも、彼らと一緒でなければ嫌だ。
そして、何より

「……気に入らないんだよね、あいつ」





第三章





町に到着した際に、初めにクライサが訪ねた店に戻ると

「「「「あ」」」」

見覚えのある人物と、目が合ってしまった。

「リオン!?なんでここに…」

「忘れ物届けに来た」

「あたしが連れて来た」

「クライサ!…いたのかお前」

「ほう、ケンカ売ってきますか」

店の中には町の住人が集まっており、奥のカウンターに寄りかかるように店主であるレマックが、そしてその隣にエドワードがいる。彼の傍らにはアルフォンス。もちろん、本物のエルリック兄弟だ。
その彼らとバッチリ目が合ってしまったので、とりあえず短いやり取りを交わしたわけだが、それを店内にいた全員が不思議そうに見ていて。

「君はさっきの…」

「ども、またお邪魔するね」

目を丸くしているレマックに、クライサは苦笑しながら軽く頭を下げた。
初めにここを訪ねた際、クライサはその特徴を伝えてエルリック兄弟の所在を尋ねた。その結果、『エドワード様とアルフォンス様』でなく、本物のエドワードとアルフォンスの情報を教えてもらったのだが、当然町の者たちにそんなことがわかる筈もない。









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