「それで、アンタたち。名前は?まさかエドワードとアルフォンス、なんて言わないよね?」

嬉々として話し続ける青年があまりにも鬱陶しかったので、彼を無理矢理離れさせたのはクライサ。少々強引なやり方をしたため、青年は床に沈んでいる。

「あ、えーと…僕はフレッチャー。フレッチャー・トリンガムです」

兄を心配そうに見下ろしていた少年が答える。あくまでアルフォンスだと言い通すかとも思ったが、さすがにクライサたちを前にしては嘘を言うわけにはいかなかったのか、素直に本名を名乗った。

「…俺はラッセル。ラッセル・トリンガムだ」

復活しやがった。舌打ちするクライサの隣で、リオンが溜め息をつく。

「ラッセルとフレッチャーね。で、あんたらどうすんだ?」

本物のエルリック兄弟がこの町に来てしまった以上、もう長くはその名を騙ってはいられないだろう。エドワードたちが黙って町を出て行くというなら別だが、彼らに限ってそれはない。

「研究を続けるさ。…あと少しなんだ」

「あと少し、ねぇ」

「…そうだ!研究過程を見てくれないか?君ならいい助言をくれると思うんだ!」

希望を胸に、ラッセルはクライサへと提案する。彼女の錬金術師としての腕を信用して言っているのだろうが

「お断りするよ」

彼女の返答は冷たいものだった。

「あたしはエドたちの仲間だ。アンタたちには興味があったから会いに来ただけ。手伝いに来たわけじゃない」

少女は立ち上がる。その隣のリオンもまた、ソファーから腰を上げた。
ラッセルは彼女に断られたことにショックを受けたらしく、引き止めることも出来ない。フレッチャーはやはり不安気にその様子を見ているだけだ。

「でもきっとまた、あたしたちはここに来る。エドたちがそれを求めてるから」

そう言って指差した先は、ラッセルの服の胸ポケット。そこに入っているのは賢者の石の試作品だ。ラッセルは眉を寄せる。

「ひとまず俺たちは帰らせてもらうよ。じゃあな、エドワード様、アルフォンス様」

不敵な笑みを残して、リオンたちは部屋を出た。そこに残ったラッセルたちは、暫くそのドアを見つめたまま、動けなかった。








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