「エドワード様、アルフォンス様。お客人がいらしてます」
「客人?」
「はい、軍服姿の少年と小さな少女の二人組です。お通ししますか?」
「……はい、お願いします」
金髪の青年が答えると、男は一礼してその部屋を出て行く。
足音が遠くなった頃に、青年のそばにいた少年が不安気に口を開いた。
「兄さん、どうしよう…お客さんって軍人なんでしょ?バレちゃうよ…」
「バレないかもしれないだろ?ここで追い返したら、マグワールたちに怪しまれる。俺が上手くやるから、お前は堂々としてろ」
そう言った青年の眼は、銀色だった。
第二章
やはりリオンを連れて来て良かった。クライサは心からそう思った。
私服姿の彼女とは違い、軍服姿のリオンの、軍人としての説得力は絶大だ。たとえ子どもにしか見えない外見でも、軍服を着ているというだけで軍人に見えてくる。嘘つき扱いされることはほとんどないだろう。
「エドも、銀時計を見せれば信じてもらえたかもしれないのにね」
残念ながら彼の銀時計は今リオンが持っているから、国家錬金術師であることを証明するのは不可能だ。
応接室へと通されたクライサたちは、その広い部屋を見渡した。室内には、高そうな家具や、全く実用性の無さそうな置物などが置いてある。町の様子からは考えられない、裕福な家なのだと分かる。
偽エルリック兄弟の研究ーー賢者の石は、町の人々にとっても唯一の希望だ。
いつ完成するかもわからない研究だが、金の採掘や細工で活発だった頃の町が忘れられない彼らは、躊躇いながらも投資をやめられないでいる。
町の人たちからは、そう聞いていたのだが。
「……この様子だったら、マグワールからの投資だけで十分そうなのにね」
わざわざ町人たちから研究費を集める必要があるのだろうか。そう疑問に思わずにはいられない程、屋敷は大きく、豪奢なのだ。
「ま、大方町人を逃がさないようにするためだろうな」
「?どういうこと?」