「……どう思う?」
先ほどクライサが入った店の軒下を借り、合流した彼女らは情報を交換し合った。
座り込んだ少女が、隣に立つ少年に問う。
「どうもこうも…ひとつしか考えられないだろ。この町にはエルリック兄弟の偽者がいる」
「間違いないよねぇ…」
マグワールの屋敷にいるという兄弟。彼らは賢者の石について研究しているらしいが、どうにも本物だとは考えにくい。
あのエドワードが、そのような権力者の力を借りるだろうか。軍という後ろ楯があるのだ。仮に賢者の石を精製出来たとして、成果を全て軍に持って行かれるとなっても、エドワードなら上手く隠すことが可能だろう。
何より
「あのエドが一つの所に留まって研究するなんて、考えられない」
エドワードたちは、彼らが自身をそう呼ぶように、各地を転々としている旅から旅への根無し草である。
加えて住民たちから聞いた話では、兄弟がこの町に来たという時期にも疑問がある。まだ彼らがイーストシティにいた頃、既に『エルリック兄弟』はゼノタイムで研究を始めていたのだ。
「しかしアイツらの偽者か…」
随分と勇気のある奴らだ。
「あのエドたちの名を語るなんてね…」
まだ見ぬ偽者を思い、二人同時に溜め息をついた。
「どうする?」
目的は彼らとの合流、及び銀時計を届けることだ。いつまでもこうしてはいられない。
「一応エドたちの居場所はわかってるよ。ベルシオって人にお世話になってるんだって」
居場所がわかるのなら、直ちにそこへ向かえばいい。なのに、そうしないのは何故か。
それは、単なる、好奇心。
「『エドワード様』と『アルフォンス様』ねぇ…」
「拝んでやろうじゃないの。お二人のお顔を、ね」
(悪い、エドワード)
(ごめんね、アル)
好奇心には勝てない。二人の意思は一致した。
目指すは大きな屋敷。マグワール邸へと、彼女らは歩みを進めた。