同時刻。
クライサ同様町の中を歩いていたリオンもまた、一つの店に入った。こちらは薬屋らしい。

「いらっしゃい!…おや、随分と若い軍人さんだね」

「こんちわ」

休暇を取ってのものだとは言え、上司から言い渡された以上は任務のうち。そのため彼の服装は軍服だ。いくら少年にしか見えない風貌でも(と言っても少年であることに変わりはないのだが)、流石に服装から軍人だということがわかるのだろう。国家錬金術師であるエドワードを探すにあたり、こちらが軍人であるという証明が出来るのはそれなりに便利だ。

「どうしたの?どこかに怪我?それとも病気?」

「あー、ごめん。俺客じゃないんだ。人探しててさ。エルリック兄弟がこの町に来てるって聞いたんだけど…」

そう尋ねると、店の女主人は嬉しそうに笑みを浮かべた。

「エドワード様とアルフォンス様に御用かい?」

(ん?)

エドワード様?アルフォンス様?

「うん…まあ」

「なんだい、エドワード様たちの知り合いなの!もっと早く言ってくれればいいのに!」

反応が、予想していたものとあまりにも違い過ぎる。『暴れん坊兄弟』と噂の彼らが、様付けで呼ばれるなんて。

(何かおかしい…)

リオンの頭の回転の速さは、エドワード、クライサとほぼ同レベルである。天才錬金術師と唱われる二人に劣らない頭脳。だが、彼は決してそれを自慢としない。

「えーと…じゃあ兄弟の居場所知ってる?」

「もちろん!ほら、あそこに大きな屋敷があるでしょう?」

女主人が指差す先へと目を向ければ、窓の外、山の手前に高い塀が見えた。だが門らしき扉は堅く閉ざされ、中を窺うことは出来ない。

「あそこはね、ここの金鉱の管理人であるマグワール様の屋敷なんだ」

「へえ、でっかい家だね。金鉱の管理人ってのはよほど儲かるんだな」

「そこに、エドワード様とアルフォンス様がいらっしゃるんだよ」

聞けば、二人はその屋敷である研究をしているらしい。マグワールに施設を、町の住民たちから資金を提供してもらい、町を復興するために励んでいる研究。それはリオンも数度耳にしたことのある名だ。『賢者の石』。


(やっぱり、何か変だ…)








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