「……ここか?」
「地図ではその筈だけど…」
第一章
金鉱の町、ゼノタイム。
信じられない程に金が取れる山がある。
金細工の技術が素晴らしく、この町の金細工といえば、高額な値段で売り買いされる。
以前は緑豊かで農業がさかんだった町は、金が見つかった当初、揺れる草の間に金が光っている、とまで言われた楽園のような土地らしい。
それが、彼女らの聞いていた話だった。
「金どころか…草木すらないじゃんか」
茶色の大地を見渡しながら、少女ーークライサは言った。それに同意するように隣に立つ少年、リオンもまた周囲を見回す。
「本当にこんな所にいるのか?エドワードたちは…」
リオンは、本来このような町にいるべき人間ではない。
アメストリス国の東部の中心に位置する街、イーストシティにある東方統轄軍司令部に所属する少尉である彼が、何故この町にいるのか。それは
「しっかしエドもドジだよね。よりによって銀時計を忘れるなんてさ」
…というわけだ。
彼らの友人、鋼の二つ名を持つ国家錬金術師であるエドワードが、その証の銀時計を司令部に忘れて行ってしまったのだ。
しかしそれに気付いたのは、エドワードたち兄弟が出発した日の夕方のこと。彼らは既に列車の中。
そこで上司に命じられ数日の休暇を取らされたリオンが、彼に銀時計を届けるべくゼノタイムに向かったのだ。
その途中、列車の中で会ったのが
「多分この町にいるんだろうけど…どうやって探す?」
長い空色の髪を携えた少女、クライサだ。
彼女はエドワードたちと共に旅をしていたが、この時はちょうど別行動をとっていたらしい。
リオンは銀時計を彼女に託そうと試みたのだが、何故か強制的にここまで連れて来られてしまった(一人で歩き回るのが嫌だったのだそうだ。なんて身勝手な)。
「そうだな…やっぱり聞き込みか?」
「じゃあ二手に分かれよっか。そんなに大きな町じゃなさそうだし、すぐ見つかるでしょ」
少女の提案により、彼らは分かれてエドワード、及びアルフォンス両名の捜索に取り掛かった。