「いやぁ、あれぞチームプレーってやつだね」

夕陽が沈む荒野。そこを走る二台の車の一方で、後部座席に腰掛けたクライサが上機嫌に言う。

「ごめんね、大佐。活躍の場を奪っちゃってさ」

「まったくだ。君たちが四人がかりで立ち向かわなくても、私がこう、パチンとやればな…」

助手席のロイが右手の指先を鳴らしながら、後ろを向く。しかし、ニヤニヤと笑うクライサを見つけて、訝しげに眉を顰めた。

「……なんだね、その気味の悪い笑顔は」

「これ、なーんだ?」

上機嫌な笑みのまま、クライサは両手でつまんだラベルを差し出した。わざとらしく立てられた小指を、ロイは指摘する暇もない。彼の視線は、ラベルの中心に大きく書かれた『火薬(強力)』の文字から外せないでいる。

「こんなのに火を点けたら、一体どうなってただろうねぇ」

やれやれと、クライサはわざとらしく溜め息をつく。しまった、と露骨に顔を歪めるロイに、隣で運転をしていたリオンが冷たく言った。

「何でもかんでも燃やせばいいと思ってるから、肝心なとこで注意が足りなくなるんだよ」

「……はい、すみません…」

前方に顔を向けたまま、抑揚もなく告げられた言葉にロイは肩を落とした。上司が部下に、それも一回りも下の子どもに敬語で謝ってる。クライサは後部座席からそれを面白そうに眺め、それから夕焼け色に染まった空を見上げた。
長かった戦いは終わった。また自分たちは、目的のための歩みを再開するのだ。前を走る車からは、時折左右に大きく揺れるたびに悲鳴が上がっている。その更に前方へ目を向けた。荒野の先はまだまだ見えない。

(だけど、ゴールは必ずあるから)

どんな道であっても、自分の選んだ道だ、最後まで行けるはず。そしてそれは、あの兄弟と共に進む道だ。これ以上心強いことはない。

「よぉしリオン、エンジン全開!突っ走れゴーゴー」

「それは前の車を見習えってことか?」

「むしろ前の車を追い越してほしい」

「馬鹿か君は!ただでさえクセの強い車なんだから、下手にスピードを出さなくていい!リオン、安全運転を継続しろ!」

「大佐の言うことは聞かなくてよーし」

「了解」

「なにぃ!?お前た…のあぁ!?」

踏みしめられたアクセル。グンと背もたれに押しつけられる感覚にロイが悲鳴を上げる。顔色一つ変えないリオンの運転で、車は猛スピードで前の車を追い上げる。
夕陽に照らされた荒野の中、クライサの楽しげな笑い声が激しいエンジン音と共に響き渡った。





END








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