「げへへへ〜。ネズミどもはみんな潰れちゃえ〜!!」
ゲイルはニタァと笑うと、持ち上げた物を司令部の一同に向かって投げた。どれも適当に放り投げただけだが、その一つ一つはかなりの重さがある。
ハボックのすぐ横の足元に鉄の板が突き刺さり、ブレダの上にも机が三つ降りかかってきた。なんとか避ける足元にも、瓦礫のかたまりや鉄筋の一部が落ちてくる。
扉の一番近くに立っていたリオンの頭上には巨大な木箱が落ちようとしていて、慌てたロイは駆け出すが、当の本人は至ってクールにそれを避ける。そしてロイの心配を素知らぬ顔で、ホルスターから抜いた拳銃を構えた。
「ちょろちょろするから当たらないじゃないか〜」
銃口の先では、ゲイルが投げ飛ばし切れずに足元に落ちた瓦礫や木箱を持ち上げている。それらもまた投げる気なのだ。その前に燃やし尽くしてやろう、とロイが手を伸ばすが、クライサの声が制止した。
「ダメだ大佐!!」
「!?」
強い口調にロイの動きがビクリと止まる。
その隙にリオンは、ゲイルが木箱などと共に持ち上げた鉄筋に向けて発砲した。朽ちた部分を数箇所狙い撃たれて鉄筋は崩れ、鉄筋によって支えられていた木箱がバランスを崩してゲイルの頭上に落ちる。
「おぉ〜?」
衝撃でゲイルの頭はグラリと揺れ、持ち上げていた瓦礫類はバラバラと周りに落下した。だがゲイルはタフなもので、倒れることなく足を踏みしめると、ニタァと笑みを浮かべる。
しかし、それも承知の上だ。ゲイルが投げた瓦礫を足場に、高く跳んだエドワードは右腕を太い棒に錬成する。それを振り下ろされ、ゲイルは受け止めようと手を伸ばすが、エドワードの右腕はゲイルの両腕に軽く触れただけだった。
「ハッズレ!」
ニッと笑い、エドワードはゲイルの肩に足をかけ、その後ろへと跳躍する。
その間に、隙だらけの足元を狙って氷が這った。エドワードがゲイルの注意を上に向けている隙に、クライサが地面を凍らせてゲイルの両足を固定したのだ。
「な、なんだよ、これ〜っ。足が動かないぞ〜っ」
何が起こったのかわからず、両手をバタつかせるゲイルの前に、大きな影が立ちはだかる。
「おじさん。そういうの、なんて言うか知ってる?」
アルフォンスは、ゆっくりと腕を引いた。
「……無駄なあがきって言うんだよ!」
鎧の大きな手がゲイルを遠慮なく殴り、その場にノックアウトした。