クライサの錬成したいくつもの氷のナイフは、空中を走り、傾いた鉄筋の間を抜けて屋外へと飛ぶ。鉄筋や瓦礫を避けて投げられたものだから、当然瓦礫の陰に隠れていたコルトには当たらない。
また銃声がした。迫る銃弾を防ぐためにクライサとロイも柱の後ろに身を隠す。

「捕まるくらいなら、せめてどちらかは道連れにこの世とお別れさせてもらう」

銃を撃ちながらまた移動したのだろう、別の場所から声が聞こえた。

「なんでアンタなんかの道連れにされなきゃいけないのさ!」

クライサは再び両手を合わせ、周囲に大量の氷を錬成した。一様にナイフの形状をしたそれを、やけになったように全方位に向けて放つものだから、慌てて柱に身を寄せたロイがクライサを呼ぶ。それでもやはり鉄筋類に当たらないよう気を遣ったのだろう、何にも掠ることなく屋外に飛んだ氷は、日の光を反射しやがて霧散した。
コルトはクライサの錬金術に驚きはしたが、それが自分を害することがないと知ると上機嫌に笑い声を上げた。

「どうやら、お前らを道連れに出来そうだな!人の計画を邪魔した罪は重いぞ!武器を奪い、軍と対抗出来る組織を作り、いずれは政権をいただくつもりだったのに、よくもめちゃくちゃにしてくれたな!」

また銃声。移動するコルト。追うようにナイフを投げたクライサは、しかし命中させられない。

「そもそも軍とテロリスト、どう違うっていうんだ!?武器の量か?人数の違いか?俺は歩むべきだった自分の人生を軍に奪われた!その俺が誰かの命を奪おうとしたからってなにが悪い?」

コルトが発砲し、移動するたびにクライサはナイフを放つ。その律儀とも言える行動に、ロイは疑問を感じていた。一発逆転の機会を狙うことが常の彼女らしくない。

「結局、俺とお前たちの違いなんてないんだよ!」

「うるさいよ」

ナイフを放った直後、クライサは言った。ロイの心配を吹き飛ばすほどに、冷静すぎる声音で。

「軍とテロリストの違いなんて知らない。だけど、あたしたちとアンタは全然違う」

ナイフが的を外したことを確認し、再び発砲しようと瓦礫の陰からコルトは半身を覗かせる。

「違うものか!」

その時、鉄筋が高く鳴った。









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