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汽車を降りて、一息。
相変わらずの田舎っぷり(褒め言葉)に、なんとなく安心した。
イーストの街ではこんなに広大な緑を見ることはないし、風の匂いも感じられない。
ここ、リゼンブールを訪れるのはあたしはまだ三回目だけど、故郷のように感じられて、イーストシティと同じくらい好きな場所だった。

広大な自然を楽しみながら、時折すれ違う人々に挨拶を返しながら、高台のその家へと歩いていく。

「おっ、来たな」

家の前で出迎えてくれたエドに合わせるように、デンが一声吠えた。







28.
epilogue

エピローグ







「あ、いらっしゃいクライサ」

エドと一緒に家の中に入れば、聞き慣れた声が迎えてくれた。

「こんにちは、アル。久しぶりだね」

「うん。元気そうでよかったよ」

「そっちもね。調子はどう?」

ぼちぼちだよ、と笑ったアルは、セントラルで別れた時より少し筋肉がついてきたみたいだ。
右手にダンベルを持っているところを見ると、毎日少しずつトレーニングしているのだろう。
真面目な彼のこと、じきにエドみたいに自由に走り回れるようになる筈だ。

「ばっちゃんは今ちょっと出かけてんだよな」

「そうなの?後で挨拶出来るかな」

「大丈夫だよ。すぐ帰ってくると思う」

リビングへ通されながらそんな会話をしていると、なんかドタドタとやかましい音がしてきた。
何か近付いてくる、と思った時にはもうその姿が目の前に。

「クライサ!!」

二階から階段を駆け下りてきたらしい、息を上がらせながら駆け寄ってきたウィンリィがあたしの手を握る。

「おかえりなさい!」

…………。
物凄い勢いで言うものだから、あたしは反応出来なくなって数秒固まってしまう。
彼女の後ろで、エドとアルが苦笑した。

「こいつ、ずっとお前に『おかえり』って言うんだって意気込んでたんだよ」

「クライサのことずっと待ってたんだよ。約束したからって」

「……あ」

そうか。
初めてリゼンブールに来た時にした約束を、ウィンリィはずっと覚えていてくれたんだ。
それがとても嬉しくて、心の内で礼を言う。
そして礼のかわりに、約束の言葉を口にした。

「……ただいま」






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