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あたしの考えの先を行ってしまう人だった。

何をする時も、あの人は幼いあたしを見守っていた。
あたしの声を聞いてくれて、伸ばした手を握ってくれて、歩幅を合わせてくれて、いつでも笑顔を見せてくれた。

それでも、一生追い付けないのだと思った。

あの人の考えることなんておおよそ見当もつかなかったし、あの人のために何か出来た覚えもない。
あの人は『子ども』だったけど、『大人』だったのだ。
本当に子どもだったあたしでは、何を知ることも出来なかった。
十年の差が、なんだかとても悔しくて、寂しかった。

今でも、追い付ける気がしない。
たとえあの人が、この道の先にいたとしても。
あたしがどれだけ急いでも、きっとあの人はあたしのずっと前を歩いていて、時折足を止めて振り返るのだろう。
あたしが追い付くのを待つように、昔と同じ微笑みを浮かべて。
その顔を見るたびに、あたしはとても悔しがるのだろう。
すぐ追い付くから待たなくていい、と怒鳴るように言って、歩幅を広げながら拗ねるあたしにあの人はやはり微笑んで、前に向き直るとまたゆっくり歩き出す。
そんな余裕が腹立たしくて、寂しくて、……少しだけ、嬉しいのだ。
『いつまでも追い付けない姉の背中』が、あたしは嫌いで、

(多分、誇りだった)







24.
liar made a promise

嘘つきの約束







「……で、何この状況」

ドッタンバッタンとやかましい音が通路の先から聞こえると思えば、ここにはいないと聞いていた二人が格闘しているではないか。
先に進んだリオの姿はなく、どうやら少し前の分かれ道で選択を誤ったらしい。
とりあえず片方を蹴り倒して残りの一方……メイへと目を向けた。

「アンタ、その馬鹿持って国に帰ったって聞いてたんだけど…なんでいるの?」

「えっとですネ…」

物凄く目を逸らされた。
大方そこの馬鹿ことエンヴィーにうまく使われてしまったのだろうとひとまず納得して、改めてもう一方に視線を戻す。

「またそんな趣味悪い格好してるんだね、本体が虫けら同然だって噂のエンヴィーさん?」

「……久々の再会だってのに相変わらず容赦ないね、氷のお嬢さん」

何があったか知らないが、賢者の石の力が尽きかけて弱りきっていたエンヴィーは、小さな身体で瓶詰めにされていたというのに、今は以前と変わらない姿をしている。
メイから話を聞けば、あのガリガリボディの人形兵を大量に吸収して、今の状態にまで回復したのだそうだ。
さすが人造人間、何でもありだ。

「……そのままシンに連れてかれてれば、少しは長く生きられただろうにね」

わざとらしく溜め息をつき、腰のベルトからナイフを一本抜くと、途端にエンヴィーの顔つきが変わる。
にんまりと笑みに歪んだ唇に、メイが素早く身構えた。





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