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「どうしたの?」
(どうしてだ)
情報を得るため、国家錬金術師となって軍に頭を垂れることを決めても、彼女の足取りは全く掴めなかったのに。
生死すら、わからなかったのに。
「私を、探していたんじゃなかったの?」
どうしてこんなにあっさりと、予期せぬ場所で会ってしまえたんだ。
「会いたかったわ、クライサ」
「あたしもだよ、レベッカ……!!」
08.
brothers and sisters
エルリック兄弟と
リミスク姉妹
(心の準備くらい、させてくれたっていいのに)
左足に刺さったナイフを引き抜き、よろめきつつも立ち上がりながら、先程から動揺しっぱなしの心を落ち着かせようと試みる。
今この状況で必要なのは、冷静に判断することだ。
いくら探し続けていた姉が目の前にいるからといって、取り乱してしまっては話にならない。
「聞きたいことがあるんだけど」
「人体錬成のことかしら?」
わかっているのなら話は早い。
他にも尋ねたいことは山ほどあるが、一番に問い詰めたいことに変わりはないので、頷いて先を促す。
「別に誰か特定の人間を生き返らせて欲しかったわけじゃないわ。あなたに『真理』とやらを見てもらいたかっただけ」
「真理を……?」
何のために?
眉を寄せるクライサに、レベッカは笑みを浮かべたまま肩を竦める。
言葉は返ってこない。
目的を話すつもりはない、ということらしい。
「リバウンドでそのまま死なれてしまっては困るから、かわりに研究員を用意したのだけれど」
「……!?…そんな……そんなことのためにキリーやベルクラインたちを…!?」
腕や足の一本や二本ならなくなっても構わないが、帰ってきてもらわなくては困る。
そのために手足や内臓、命ですら持っていかれても構わない人間を用意したのだ。
結果として、生贄とも呼べる五人の研究員は肉体ごと命を失い、クライサは真理を見た後無事に帰ってきた。
「キリー、ベルクライン、マックス、ヨーク、スターロン。あなたは特別彼らと仲が良かったわね」
それが、彼ら五人を贄とした理由。
ぞっとするような笑みを浮かべる彼女の言葉に、クライサは姉を見る目を更に鋭くした。
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