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国立中央図書館第一分館。
そこに、資料はある。

『君たちならば、真実の奥の更なる真実にーー』

(どうしてだろう、)

彼の言葉が、忘れられない。







07.
賢者の石








「早くしろよ、アル!クライサ!」

「はいはい」

「兄さん、そんなに急がなくても……」

長い汽車での移動を終え、セントラルシティの駅に着いたのは正午を三時間程過ぎた頃。
エドワードに急かされて苦笑しつつも、クライサは久々にやって来た街を懐かしむように駅構内を見回していた。

「アームストロング少佐、お迎えにあがりました」

「うむ、ごくろう。ロス少尉、ブロッシュ軍曹」

四人の前に、敬礼をした軍服の男女が現れる。
ベリーショートの黒髪に、左目元の泣きぼくろが印象的な女性は、マリア・ロス少尉。
エドワードほど見事なものではないが、金髪の男性は、デニー・ブロッシュ軍曹。
二人ともアームストロングの部下である。

「こちらが鋼の錬金術師殿でありますか」

お約束通り、アルフォンスが『鋼の錬金術師』と間違われ、『ちっこいの』と称されたエドワードが暴れ出し(アームストロングに止められていたが)、もう見慣れてしまったやり取りが繰り広げられる。
クスクスと笑いながらクライサがその様子を眺めていられたのは、彼女がロスやブロッシュと面識があったからだ。
そうでなければきっと、氷の錬金術師(もしくは国軍少佐)としてではなく、単なるエルリック兄弟の連れとして扱われていただろう。

アームストロングは中央司令部に報告に向かうため、ここで護衛がロスたち二人に代わる。
スカーはまだ捕まっていないため、事態が落ち着くまでは彼女らがエドワードたちの護衛を引き受けることになっているのだそうだ。
機械鎧もアルフォンスの鎧も直ったことだし、エドワードやクライサにとって護衛の必要は無いように感じられるのだが、致し方ないと反論することはしない。

「おお、そうだ。クライサ・リミスク」

「なに?」

車に乗り込む前、呼び止められてアームストロングに振り返る。
既に乗車したエドワードたちは特に気にしている様子はなく、四人で会話を交わしていた。

「エックスフィート大尉が会いたがっていたぞ。気が向いた時にでも司令部に顔を出してやってくれ」

「ああ、イースト出る前に電話しといた。そだね、落ち着いたら顔見せに行くって伝えといて」

頷く彼に、こちらも笑顔を返した。
エドワードに名を呼ばれ、車に走り寄って乗り込む。
見送るアームストロングに窓越しに手を振った。





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