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「キンブリーが行方不明と聞きましたが本当ですか?」

ブリッグズ要塞内のある廊下に男が二人。
バッカニアの問いにマイルズは頷き、坑道が崩れる程の爆発があったのだと付け加える。

「キンブリー他数名が行方不明だ。十日間捜索したが、誰の死体も出て来なかった」

「む……『他数名』とはブリッグズ兵ですか?」

「キンブリーの部下二名と、鋼の錬金術師だ」







21.
姉妹の真実







西のペンドルトン、南のフォトセット南部では激しい戦闘が繰り広げられており、どちらもわざと戦死者を増やしているとしか思えない戦い方をしている。
やはり軍が率先して流血沙汰を起こし、錬成陣を作っているのに間違いないようだ。
足の下では、いつ地下トンネルが完成してしまうかわからない。
下手すればもう出来ている可能性だってあるのだが、止めることが出来ないのが何よりもどかしい。

その中で、とうとう『北』が動いた。
ドラクマ軍の開戦宣言。
規則的に並んだ武装兵たちは、しかし瞬く間に雪の中に沈んだ。
兵器の性能差は圧倒的で、呆気なく終わった戦闘。
砦に来ていた中央軍の男が感嘆の声を上げる。
ブリッグズ兵でなくドラクマ兵で、ここにも血の紋が刻まれてしまった。

「氷の錬金術師はどうしている?」

砦の屋上から戦況を見ていたマイルズやバッカニアらの中に、空色の少女はいなかった。
中央軍の男に問われ、バッカニアはゆるゆると首を振る。

「部屋に籠ったまま出てきません。鋼の錬金術師が行方不明だと聞いてからずっと塞ぎ込んでいたようなので、まだ暫くはあの調子でしょうな」

バズクールでの捜索の間も、彼女は本部を離れようとしなかった。
エドワードを捜し歩くでもなく、兵たちに彼の行方を問い詰めるでもなく、ただ黙って座っていた。
何か思い詰めたような、しかし何も考えていないような表情で、ただ時間が過ぎるのを待っているようにも見えた。
その彼女は、砦に戻ってくるなり与えられた部屋に籠ってしまった。
呼んでも返答は無いわ中に入るのは嫌がるわで、仕方なく暫くほうっておくことにしたのだ。

男が溜め息をつく。
バッカニアが向けた視線を受け取って、中央軍に見えない位置で、マイルズはふっと笑った。





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