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男の右手が触れ、彼の右腕がバラバラになった。
地に落ちる鋼の手、細かな部品。
剥き出しの接続部分、座り込み俯いた少年。

「あんたが狙ってるのはオレだけか?弟…アルも殺す気か?」

「邪魔する者があれば排除するが、今用があるのは鋼の錬金術師……貴様だけだ」

地に伏した鎧の身体。
右脇腹部分を破壊され、右足が取れた身体は立ち上がることも出来ない。

「約束しろ。弟には手を出さないと」

彼の頭に伸びる手。
立って逃げろ、弟の声に、少年は答えない。
響く、叫び声。

「やめろおおおおおおお!!!!」







05.
hand of destruction

破壊の右手







銃声が響き渡る。
手を止めた男の視線の先に、少女はいた。
上空に向け発砲した拳銃を背後に投げ捨て、鋭い目を向ける、クライサが。

「氷の錬金術師、クライサ・リミスク。……あたしが相手だよ」

驚きに目を見開くエドワードの前で、傷の男ーースカーが動いた。
彼を睨むクライサに向き合い、かと思えば駆け出し間合いを詰める。

頭を狙い突き出された右手を横にかわしながら、腰のベルトに取り付けてあるバッグからナイフを取り出す。
それを逆手に持つと、彼の顔めがけ斬りかかった。
男はそれを避け、彼女の腕を左手で掴む。
クライサは勢いをつけて一回転し、捕らわれた右腕を強引に抜き出すと、後ろに跳んで距離をとった。

前方には体勢を立て直すスカー、背後には未だ座り込んでいるエドワードと、伏せているアルフォンス。
ちらりとエドワードに振り返ると、不安そうな金と目が合った。
何かを言いたそうにしているが、聞く耳持たずな彼女は再び前を向く。

「タッカーさんとニーナを殺したのは、アンタだね」

男は答えない。
無言は、おそらく肯定。
国家錬金術師の連続殺害の犯人も、きっと、いや確実に彼だろう。

「どうして、あたしたち国家錬金術師を狙うの?」

「貴様ら『創る者』がいれば、『壊す者』もいるという事だ」

「……国家錬金術師に、何か恨みでもあるのかな?」

戦闘体勢は崩さない。
雨の日は視界は悪いが、『氷』の錬金術師であるクライサにとっては都合がいい。
隙あらば、錬金術で攻めていきたいところだ。






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