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(あーあ、なんでこうなったんだっけ)

不精な上司に仕事を押し付けられ、司令部までの道中を鋼の兄弟と共にしてはや数日。
目的地、東方司令部のあるイーストシティに向かうべく乗り込んだ列車内で、大きな大きな溜め息を吐く。その視界の端で、鈍く光る物。

向けられた銃口に、クライサは現実逃避をしたくなった。








03.
train jack

車上の戦い







ニューオプティン発特急04840便。
東方司令部幹部でありニューオプティン支部勤務のハクロ少将が、バカンスのために家族で乗っているというこの列車を、東部過激派『青の団』がジャックした。
クライサたち三人は、偶然そこに乗り合わせてしまったのだ。

彼女らのいる最後尾の車内には、武器を持った見張りが二人。乗客たちは怯えてしまって大人しくしている。
そこで何故、クライサに銃が突きつけられているのかというと。

「エドー?」

「さっさと起こせ!」

「……エード、起きてよー。さもなくば、あたしが殺されるよー」

……というわけである。この車両に犯人たちが乗り込んできても爆睡し続けるエドワードを起こすよう、ジャック犯が彼女に命じたのだ。
何度も声をかけ、体を揺らすが、少年が目覚める様子は欠片もない。

「……無理。あたしには起こせない」

「兄さん、一度寝たらなかなか起きないからねぇ……」

クライサとアルフォンスが揃って溜め息をつき、お手上げのポーズをとるも、銃を持つ男の眉間の皺は数を増すばかりだ。

「……っ……ちっとは人質らしくしねぇか、この……チビ!!」

ーードゴンッ

男の声が車内に響くと同時に、床へと振り下ろされたのは少年の左足。
ゆっくりと立ち上がった彼の表情を見ると、アルフォンスとクライサは反射的に一歩後退った。

「……だぁれぇがぁミジンコどチビかーーっ!!!」

突然大声を上げ暴れ出すエドワードに、手も足も出せずにボコボコにされる男。
苦笑しながら哀れみの視線を送っていたクライサの頭に、硬い物が押し当てられた。どうやらもう一人の男が、彼女を人質にエドワードを大人しくさせようとしているらしい。

「この小娘がどうなってもーー」

しかし、物事はそう思い通りには進まないもので。
男に向けられたクライサの冷たい目に、彼の背筋が凍った。






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