(1 / 7)
(あーあ、なんでこうなったんだっけ)
不精な上司に仕事を押し付けられ、司令部までの道中を鋼の兄弟と共にしてはや数日。
目的地、東方司令部のあるイーストシティに向かうべく乗り込んだ列車内で、大きな大きな溜め息を吐く。その視界の端で、鈍く光る物。
向けられた銃口に、クライサは現実逃避をしたくなった。
03.
train jack
車上の戦い
ニューオプティン発特急04840便。
東方司令部幹部でありニューオプティン支部勤務のハクロ少将が、バカンスのために家族で乗っているというこの列車を、東部過激派『青の団』がジャックした。
クライサたち三人は、偶然そこに乗り合わせてしまったのだ。
彼女らのいる最後尾の車内には、武器を持った見張りが二人。乗客たちは怯えてしまって大人しくしている。
そこで何故、クライサに銃が突きつけられているのかというと。
「エドー?」
「さっさと起こせ!」
「……エード、起きてよー。さもなくば、あたしが殺されるよー」
……というわけである。この車両に犯人たちが乗り込んできても爆睡し続けるエドワードを起こすよう、ジャック犯が彼女に命じたのだ。
何度も声をかけ、体を揺らすが、少年が目覚める様子は欠片もない。
「……無理。あたしには起こせない」
「兄さん、一度寝たらなかなか起きないからねぇ……」
クライサとアルフォンスが揃って溜め息をつき、お手上げのポーズをとるも、銃を持つ男の眉間の皺は数を増すばかりだ。
「……っ……ちっとは人質らしくしねぇか、この……チビ!!」
ーードゴンッ
男の声が車内に響くと同時に、床へと振り下ろされたのは少年の左足。
ゆっくりと立ち上がった彼の表情を見ると、アルフォンスとクライサは反射的に一歩後退った。
「……だぁれぇがぁミジンコどチビかーーっ!!!」
突然大声を上げ暴れ出すエドワードに、手も足も出せずにボコボコにされる男。
苦笑しながら哀れみの視線を送っていたクライサの頭に、硬い物が押し当てられた。どうやらもう一人の男が、彼女を人質にエドワードを大人しくさせようとしているらしい。
「この小娘がどうなってもーー」
しかし、物事はそう思い通りには進まないもので。
男に向けられたクライサの冷たい目に、彼の背筋が凍った。
|→
[index]
・・・・・・・・