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少年は『強欲』を受け入れ、新たな罪となった。
彼の意識はそこに無い。
数ある魂の内の一つが、グリードとして、リンの姿で立っている。

リンはどうした?
死んだのか?

「っざけんな」

黙って彼の笑い声を聞いていた少女が、動いた。







16.
waver and voice

彼の迷い、父の声







リンの姿をした者に蹴りかかった。
彼はその手を硬化させ、鋼の仕込まれた靴を受け止める。
動揺は無い。
自分を睨む空色と、目を合わせた。

「やめろクライサ!」

「相手はリンなんだよ!?」

「違うよ」

リンじゃない、グリードだ。
一旦彼から距離をとったクライサは、その左手のウロボロスの印を指して言った。
そうだ、今の彼はリンではない。

「リンに身体返せ」

「そりゃ出来ねぇ相談だ」

まあ、返せと言われて素直にどうぞと言うわけがないとは思っていたが。
逆手に持った短剣を構えて、彼と向き合った。
リン……グリードに集中するクライサを、他からの攻撃から守るのはリオだ。

「ちょっとお嬢さん、大人しくしてくれなきゃ困るんだけど!?」

「知るかバカ」

さらりと返されエンヴィーは眉を寄せた。
そして、自分の手が彼女の仲間を捕らえていることを思い出す。
甘ちゃんな彼らのことだ、人質だと言えばすぐに勝手な行動を慎むだろう。

「ほらお嬢さん、おチビさんがどうなってもいいのかい?この手に少し力を入れるだけで…」

「大事な人材に何かあって困るのはそっちじゃないの?」

「べ、別に殺さなくても痛め付ける方法ならいくらでも…」

「ならお好きにどうぞ。エドがんば!」

「クライサてめぇ!!」







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