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「クライサ」

全焼した、かつての自宅。
残った焼け跡の中に、彼の姿は見つけられなかった。

「クライサ、もう日が暮れる。そろそろ行くぞ」

「わかってる」

門の前に立ち、原形をとどめていない家をただ黙って見つめていたクライサが、後方のロイの言葉に口を開く。

「……わかってる……けど、足が動かないんだよ」

何度、己の無力を嘆かねばならない?







10.
the confluence is MEAT

兄弟との合流







思い出した。
エンヴィーと名乗った彼は、元第五研究所でエドワードが会ったと言っていた人物だったのだ。
病院でその時の話をしていた時に、エドワードが彼の似顔絵を描いて見せてくれたため、本人と会っても初対面の気がしなかったのだろう。

結局、ロイに呼ばれるままに車に乗り込んでしまったから、あの後エンヴィーがどうしたのかは知らない。
彼の口ぶりから、彼かもしくは仲間がリミスク邸を破壊しただろうことは推測出来たのに。
彼を問い詰めることが出来なかった。

「それで、君はどうするんだ?」

「ウィルヘイム…レベッカの出身地だって言われてる村に行ってみる。その前に一旦エドたちと合流するつもりだけどね」

中央司令部に車を返してから、向かったのはセントラルの駅。
ここからロイは東へ、クライサは南へと発つのだ。

「そうか。あまり無茶はするなよ」

「うん。それ、エドにも言っておくよ」

荷物を肩から提げて、笑った少女にロイは複雑そうな微笑みを浮かべる。
何事もなかったように笑うクライサに些か納得のいかない心持ちなのだろうが、少女はこれ以上そのことに触れられるのを嫌った。

(……あ、そういえば)

彼の複雑そうな表情に、中央に来る前に見た男の顔を思い出す。
あの時も、彼は今と同じ顔をしていた。

「お兄ちゃんさ、なんであたしが許可をくれって言った時、あんなに渋ったの?」

決闘まがいのことまで提案して。
そんなにクライサをあの屋敷に行かせたくなかったのか。






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