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あたしが今日ここに来た目的は、単純にエドたちに会いに来たのともろもろの報告。
それから、『こいつ』の様子見だった。
「おう、クライサ。小ささに磨きがかかったな。縮んだか?」
「伸びたわ!!」
エド、アルとテーブルを囲んで席に着き、ウィンリィに紅茶を淹れてもらっているところでリビングにやってきた長身の男。
見慣れたものと変わらぬ笑顔を浮かべたリオは、長かった黒髪をばっさり切って、すっきりとした短髪姿になっている。
あたしが噛みつくのも慣れた様子であしらって、空いた二席のうちの片方に腰を下ろした。
「ああ、確かに伸びたみたいだな。三ミリくらい」
「その違いがわかる大尉もどうだよ」
「違うよ四ミリだ!!」
「大尉ほとんど当たってたね」
「ボケたのか素だったのかわかんねぇけどな」
このいつものやりとりも、今は何だか懐かしい。
「……で、右腕の調子は?」
しかしこいつとの会話のキャッチボールはうっかり夕暮れまで続いてしまうため、適当なところで切り上げて本題に入った。
「ああ、腕のいい技師のおかげで調子いいぜ。リハビリはしんどいけどな」
「ま、機械鎧ってのはそんなもんだしな。装着は痛ぇしリハビリはしんどいし、値は張るしメンテナンスは面倒だし」
「何よ、あんたの左足は誰が作ってやったと思ってんの!」
今のリオの右肩からは、以前エドがつけていたようなゴツいフォルムの機械鎧の腕が伸びている。
あの中央での一件の後、あたしがエドに連絡をとって、ウィンリィにリオの右腕を作ってくれるよう頼んだのだ。
払いはあたし持ちで。
もちろん、何かしらの形にして返してもらうつもりだけど(金で返ってくるなんて期待してない。だってリオは今、軍をお休み中で無給なのだ)。
「一年経って漸く慣れてきたってとこかな。エドワードとランファンがすごかったってことが、実際リハビリしてみてよくわかったよ」
「相当無茶してたもんね、兄さんもランファンも」
「リオさんはそんなに無理する必要ないわよ。軍に復帰するためとはいえ、無茶して体壊したら意味ないもの」
「だよな。俺はマイペースに、のんびりやらせてもらうよ」
そうは言うけど、エドやウィンリィの話ではリオは意外と頑張ってリハビリしているらしい。
剣を振るうのはまだ難しいけど、日常面ではほとんど問題ないほどになっているのだそうだ。
こりゃ、軍復帰も近いかもしれない。
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