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ブリッグズ山の麓にある町。
その宿屋の一室に、クライサはいた。

砦に戻ってから籠っていた部屋の扉越しにかけられた、鋼の錬金術師に会いたくないかという声に扉を開ければ、そこにいたのはあの中央軍の者たちと共に来ていた青軍服の若い男だった。
彼に連れられ砦を抜け出し(マイルズらには気付かれているだろうが)、車で向かったのがこの町だ。
何の説明の無いまま宿屋に入り、通された部屋に待ち受けていた人物に、クライサは目を丸くする。

「よう」

「え、なんでリオ?」

ベッドに腰掛けていたのは予想していた少年ではなく、黒髪ポニーテールの親友だった。
くわえていた煙草をサイドテーブルの灰皿に押し付け立ち上がったリオに歩み寄ると、クライサをここまで連れて来た男が部屋を出ていく。
慌てて引き止めようと声を上げるが、彼と入れ違いに室内に入ってきた人物の姿に、喉が引き攣った。

「ごめんなさいね。ここに鋼の錬金術師君はいないわ」

茶色の髪に漆黒の眼。
意外な場所で再会した姉の姿に言葉を失う。
隣に立つリオが肩に手を置き、それで漸く我にかえった。

リオはレベッカの頼みで彼女をここまで連れて来たらしい(ブラッドレイの護衛はどうした)。
クライサを連れて来た男は、人造人間たちにも秘密にしていたレベッカの部下だったらしく、元々これが目的でブリッグズに来ていたのだそうだ。

「いつものあなたなら、こんなことくらいすぐ勘づいていたでしょうに…それほど彼が心配だったのね」

「うるさいなー、そりゃ一応心配だし、会えるんだったら会いたいさ」

勧められてソファーに腰を下ろし、ローテーブルを挟んで向かいにレベッカが座る。
彼女の視線を向けられたリオが紅茶を淹れ、それぞれに渡すと自分の分のカップを片手にクライサのそばのベッドに再び腰掛けた。

「で、何が目的なの?」

カップに口を付けたレベッカに鋭い視線を送りつつ、抱いていた疑問を口にする。
リオも彼女を見つめている。
唇を離すと同時に、それを笑みに歪めた。

「そう警戒しないで。私はあなたの望みを叶えに来ただけよ」

望み?
首を傾げた妹に彼女は頷く。

「話しに来たのよ、真実を。私の口から、ね」









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