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結果としてラストを倒すことには成功したが、ロイとハボックは重傷を負い、バリーの魂はこの世から消え去った。
その上、ハボックは脊髄損傷により下半身不随。
下半身丸々神経信号が途切れているため、エドワードのように機械鎧にすることも出来ない。
笑顔を向けてくれてはいるが、その胸の内は悔しさやら色々なものでいっぱいだろう。

ただでさえ信用出来る手駒が少ないというのに、早くもリタイアする者が出てきてしまうとは。
先行きが心配になる。

だが、希望もある。
ドクター・マルコーの名を挙げたのはクライサだった。
彼は医療系錬金術師で、賢者の石を持っている。
彼ならばハボックの足を治せるかもしれないと、休暇を延長してブレダが向かった。

「早く戻ってこないかな。早く治してほしいな」

「まだ出ていったばかりだろう。少しは落ち着きたまえ」

「そういうお兄ちゃんこそ、落ち着かないって顔してるくせに」

屋上の手摺にもたれて空を眺めていた目を、前に立つロイへ向けた。
視線が合って、互いに笑みを浮かべる。
久しぶりに見る、見慣れた兄の笑顔に、クライサは心底安堵した。

「ごめんね、お兄ちゃん」

頭を下げる。
彼はその意味がわからないらしく、首を傾げて少女を見つめた。

「ヒューズ中佐のこと」

「……ああ。私が君たちのせいにするとでも思っているのかい?」

優しい口調のそれに対し、クライサは首を横に振った。
そうではない。
そういうことでは、ない。

「あたし、いつだって自分のことしか考えてなかった」

ヒューズが殺されたのは、クライサが中央を離れてイーストシティに向かっている間の出来事だ。
随分長い時間寄り道していたから、その間にロイが彼の葬儀に出席し、再びイーストに戻るには十分に時間がある。
つまり、クライサがロイを訪ねた時、既に彼はヒューズの死を知っていたのだ。

何か様子がおかしい、とは思っていた。
しかしこちらも過去のトラウマと向き合うために余裕は無く、相手を気遣ってやれなかった。

エドワードたちと中央を訪れて、ヒューズは元気かと尋ねたことも、謝りたかった。
彼の気持ちなんて知ることなく、明るい表情で返事を待ったことを後悔する(今更、遅いけれど)。








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