もう月が浮かび空は暗い。そんな夜空によく映える空色の髪を揺らして、クライサは東方司令部の前を歩いていた。少し浮かない顔で空を見上げる。
手に抱えた山のような包みは先程のパーティー(大佐主催)で貰ったもの。そう、今日はクライサの誕生日だ。だが、一番祝ってもらいたかったエドはパーティーはおろか、丸一日姿を見せず今に至る。同時に、ライもエドと同じく姿を見せなかった。アルに聞いても分からないと困ったように返された。
「ったく…エドのやつ…ん?」
はぁ、と溜め息をついて歩いていけば、前の方から何か言いあっている声が聞こえる。
何だろうと近付いてみればそこには双子のようにそっくりな見覚えのある二人組がいた。
「…何してんの」
「「クライサ!?」」
行方不明になっていたエドとライが、目の前で言い争いをしているのだ。クライサは呆れたように声をかけた。
「あ、れ。ここにいるってことは…ひょっとしてパーティー終わった?」
「うん」
そう言ってやればエドはダラダラと冷や汗を流し慌てたように隣のライを見る。と同時に、ライの拳がエドの顔面にクリーンヒットしていた。
「バカエドっ!てめぇのせいで出れなかったじゃん!」
「とりあえず何があったか話してよ」
「お、おう。いやなんつーか…お前のプレゼント探しに行ってた」
「…だけ?」
エドはこくっと頷く。
アルに聞いた話、朝の六時にはすでに宿にいなかったらしいがそれだけでそこまで時間を食うものだろうか。
不思議に思っていたらライが苦笑いで口を開いた。
「こいつ最近ずっと探しててさ、結局今日になっていいのがないなんて言い出して。俺は無理矢理買い物付き合わされたってわけ…おかげで間に合わなかったしな」
「それはごめんって…!」
エドはライに怒られ苦い顔をしている。クライサはそんな二人を見て笑った。
「でもその分いいの選べたつもりだぜ?…誕生日おめでとう、クライサ」
ほら、と顔を赤くしてぶっきらぼうにクライサに包みを差し出す。丁寧に包みを開けば、中からはペンダントが出てきた。
金色のガラスの中に綺麗な水色のサファイアが浮いているような四角い水晶のような形をしたものだ。金色のガラスが中の水色を反射してきらきらと輝いている。
クライサは綺麗、と呟いてそれをマジマジと見つめた。
「お前っつったらやっぱ水色だと思ったんだけどさ。被るかなって思ってたらこれがあって…」
エドはそっぽを向いて話す。顔は真っ赤でとにかく照れているようだ。
「すごい綺麗…」
カチャッと、それを首にかける。
「本当に、ありがとう!どうしよ…すっごい嬉しい…」
満面の笑みを浮かべた。エドはちらっとそうやって笑うクライサを見て、(今までも充分だったが)更に顔を赤くした。
そしてごまかすようにライの肩を叩く…が、隣に彼女の姿はなかった。
「ほ、ほらお前のはラ…イ?」
気付いたらライは遠くから二人を眺めていた。
「後は二人でごゆっくり〜あ、クラ!プレゼントは大佐ん家に届くように送ってあるから!」
「朝きてた名無しのってあれライの!?あのブレスレット!」
そーだよ、と手を振ってライは姿を消した。
「…帰るんだろ?送ってく」
「うん」
そのまま、二人で歩き出す。少し歩いて、その頃にはもう二人の手は重ねられていた。
―クライサ。あのネックレスを選んだ理由さ、本当はあの金色が俺で水色がお前で。俺達みたいだろ?
なんてちゃんとに理由があったんだが、驚く程奥手なエドにそんなこと言えるわけもなく。
ただぎゅっと重ねられたクライサの手を握った。