今日は朝からエドワードの様子がおかしい。……というより、ぶっちゃけて言うと尋常じゃなく面白い。


「…………………」
「(……うわぁ、まだやってる)」

司令室の自席で普段通りのデスクワークに励む空色の少女に少し離れた位置から意味有りげな視線を投げて、ポケットの中の何かを握り締め、少しばかり顔を赤らめて、それから深い深い溜め息を吐く。この光景が朝から何度となく繰り返されているのだ。見ている方もいい加減飽き飽きしてくる。端から見ると「何してんだあいつ」状態だが、おそらく本人にとっては途轍もなく深刻な問題なのだろう。まぁ今日の日付を考えれば粗方その内容は予想がつくのだが。

「……エドワード君よ」
「あ?」

出来る限り声を落とし、金髪の少年に向けてちょいちょいと手招きをする。虚ろな表情のまま案外素直にこちらに寄って来た彼に耳打ちをしてやった途端、その顔がみるみる赤くなっていった。所謂茹で蛸状態だな、うん。

「な、なななななんでわかっ……!?」
「あんだけ挙動不審になってりゃ普通わかるわ。幸い本人は気付いてねーみたいだけどな」
「マ、マジか」
「ああ。マジマジ」

本日は5月26日。言わずと知れたクライサ姫のバースデーである。勿論あたしは朝廊下で彼女と出会すなり、その小さな体を抱き締めて心からのお祝いの言葉と愛の籠もったプレゼントを捧げ済みだ(鬱陶しいとか言わないで頼むから)。
現在大佐達は全員見事に出払っていて、しかも暫く司令室には戻って来ない。勤務時間が終わってしまえば、司令部の皆が集まり彼女の生誕日を祝う事になっている。照れ屋の彼にとって、他に人がいない今が絶好のチャンスだというのに。

「渡したいんだろ?そのポケットの中のプレゼント」
「………おう」
「ちなみに中身は?」
「……………ブルートパーズのペンダント」
「ま、あんたにしちゃあ上出来だな」
「うるせーよ」
「とにかくさっさと渡してきちゃえばいいじゃん。ついでにキスの一つでもかましてやれや」
「Σばっ……!!んなこと出来るかっつうの!!」
「あああああもうめんどくせー!!男ならウジウジしてねーでどーんとぶつかってこい!当たって砕けろ!!」
「いや砕けたら駄目だろ」
「なぁクライサー、エドワード君が大事な話があるってさー」
「Σうわあああああバカヤロォォ!!」
「え、なーにエド」
「Σいいいいやいい!別になんでも……」
「あ゛ぁ!?今更逃げんのかクソチビコラ」
「だっ、誰がチビ……だ……」
「(珍しくエドが弱気だ)……で、どーしたの?話って?」
「あ、えーと、まぁ、その」
「?」

仕事を中断して駆け寄って来たクライサの顔すらまともに見れずに俯くエドワードを残し、あたしは小さく笑って彼らを二人きりにするべく静かに部屋を後にした。
………え?当然その後の微笑ましい展開もバッチリ扉の隙間から見てましたけどね!ふははは!


小さなのお手伝い
(今日くらい、あんたにあの子を譲ったげるさ)


「あーもー二人して顔赤くしちゃって……可愛いなぁもうっ」
「チッ、そこまでいったらいくとこまでいきゃあいいのによ」
「……ねぇ、やっぱ覗きとかはやめてあげた方が……」
「ゴルァァァクロック!ハルフォード少佐!リース!てめーらこそこそ覗いてんじゃねええええ!!」
「「うるせー赤豆」」
「え、逆ギレ?」
「ていうか僕まで共犯扱い?」







×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -