彼女は、よくモテる。そりゃ、可愛いし、小さいし、優しいし。性格がちょっとアレだが、オレはそんな所も引っくるめて全部好きだ。未だにこの想いを彼女に伝えられてはいないけど。

「もう5月も終わるってのに、夕方はちょっと寒いね」

「……そう、だな」

学校の帰り道を二人並んで歩く。いつもはアルとオレと彼女、クライサの3人だが今日、アルはいない。メイと呼ばれる後輩に連行されていた。弟よ、見捨ててすまない。
が、今回ばかりはメイとやらに感謝する。クライサと二人きりというこのシチュエーションをオレは今日、ずっと狙っていたのだから。
しかし、冒頭で述べたように、クライサはかなりモテる。そりゃもう老若男女問わずに、彼女に群がるのだ。リンやグリード、ウィンリィにリオも。挙げ句、教師であるロイですらも。彼女に想いを寄せるオレとしては、今日に限ったワケじゃないが、そのような光景は見てても、大変面白くないワケで。
昼休みは特に時間が長いので、一人屋上で拗ねていたのだ。

「―――…ド、エド!」

「…っ、?」

ハッとして目を見張った。隣を歩いていたクライサが、いつの間にか思考に沈み、歩みを止めていたオレの顔を小首をかしげて覗き込んでいたのだ。空色の綺麗な瞳と視線がかち合った。あー、くそ!可愛い!!

「どうしたの?寒いからトイレ我慢してるの?」

「ちっげぇよ!」

「なんだ、つまんない」

「………」

落ち着け、オレ。今日はオレにとってもクライサにとっても大切な日なんだ。ポケットの中に隠してるソレを確認するようにキュ、と握り締める。意を決して、クライサの名を呼んだ。

「なに?」

「ホラよっ!」

「わっ!!」

ポイと投げたのは小さな箱。クライサは驚きの声をあげて、ソレを慌てて受け取った。

「…これ……」

「…誕生日、おめでとう…」

「エド……」

箱をしっかりと持ち、オレを見つめるクライサ。そして、

「………遅い」

「…は?」

「遅いよ!いま何時だと思ってんのさ!?みんなはお昼に祝ってくれたのにッ!!」

半ばヤケクソのようにオレを怒鳴る。え、遅いって……つか、昼に………?

「そうだよ、みんな昼休みにプレゼントくれたの。アンタは一人いなかったけどね」

心中を読んだかのように彼女は言った。確かにオレは昼休み、クライサにプレゼント渡すタイミングが読めなくて一人屋上で拗ねてたけど……!!

(…っ、オレの今までの努力は何だったんだあぁぁっ!!!!)









大切な日

(でも…エドのくれたプレゼントが一番、嬉しい。ありがと)

(………おぅ)



HappyBirthday!Crysa!









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