立場上、いつかはやってくることだと思っていた。
理解していた。
ただ、覚悟が出来ていなかった。
絶対信頼関係
自分は軍の狗と呼ばれる存在で、軍から命令が下れば、否応なしに戦地へと赴かなければならない。
それは、資格を取得すると決めた時から覚悟していたことだ。
もし召集されれば、もちろん逃げずに戦場に殴り込んでやろうと思っているし、上のほうに文句を言うことも拒否することもしようとは考えていない。
そう、だから、文句は言わない。
たとえ召集されたのが、自分でなく、彼女だったとしても。
「……姫、紅茶飲むか?」
「…………飲む」
短い返答と共に向けられた空色に、覇気が欠片も感じられない。茶髪の少年軍人は、カップを片手に溜め息を吐いた。
「限界だな…」
彼の呟きに、隣に立つ金髪の女性軍人が頷く。二人の視線は、自席に突っ伏し両腕をダラリと垂らした空色へ。
氷の錬金術師ことクライサ・リミスク少佐の眼に、いつもの強い光は宿っていなかった。