この店主は、確かロイ・マスタングと名乗っていた(常連客からは、それをもじってマスターと呼ばれているらしい。そのままだ)。
で、この少年の名はリオン・アサヌマだった筈だ。

「ん?ああ、俺のは母方の苗字だから」

俺らの両親、離婚しててさ、俺は母親に引き取られたんだけど、まぁ色々あって兄貴と暮らすことになって云々。
特に表情を変えることなく若い店員は説明してくれたのだが、なんだか設定が細かくなってきた、と読者的視点でレイは思った。
相変わらずカウンター席で珈琲を口にしている彼女の隣には、無言でショートケーキを貪っているクライサの姿。
つい先程、レイはここにいる筈だってクロ先生から聞いてさ!と笑顔で現れ、リオンの顔を見るなり不機嫌面になって、しかしその少年から大好物を出されたので、餌を与えられた小動物のように大人しくしている。
とりあえず店内で暴力沙汰になる心配は無くなったが、なんだか餌付けされているような気がするのだがどうだろう。

クロフォードとロイは知り合いだったのだな、とか、レイやクライサもここの常連になりつつあるのか、とか、暫く談笑していたが、大人しくしていた猛獣が食事を終えて立ち上がった。
ロイにケーキや珈琲の代金を手渡すと、レイを促して出入口に足を向ける。
もう少しゆっくりしていけばいいのに、と苦笑混じりに言ったリオンを、空色の目できっと睨み付けた。

「次会ったら覚えとけよ!」

あとケーキんまかったです。

ペコリと頭を下げて出ていった少女にまた苦笑する。親友に続いたレイに手を振り返すと、彼女に何をしたんだね、と兄から疑問の声がかかったので、何もねぇよと笑って誤魔化した。





世の中そんなに甘くない
(きっと、このくらいが
ちょうどいい)






このお話のリオン&ロイは料理上手
【H21/02/25】



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