改札を抜けた先の出入口、携帯を取り出して時間を確認してから顔を上げる。

「「あ」」

先日と全く同じ場所で、あれ以来顔を合わせていなかった相手と再会した。

「……あー。久しぶり、なのかな、一応」

「そう…だね。メールはしてたけど」

先日と違うのは、暗い空からまだ雨は降っておらず、彼だけでなくレイも傘を持っていること。
そして、彼女の隣に不機嫌面のクライサがいることだ。

「……なあ、俺って嫌われてんの?」

「え、なんで」

なんでってそりゃ。そんな親の敵を見るような目で睨み付けられれば、嫌い通り越して憎まれてすらいるんじゃないかと思えてくるって。
まあ、その本人がレイの後ろに隠れるようにしているから、彼女からは見えないのだろうけど。

「ここで会ったが百年目……」

うん?
ひたすら黙っていた少女が低い声で言ったかと思えば、持っていた傘を両手で握り直し、勢い良く振り上げて襲いかかってきた。レイは突然のことに目を丸くしている。
覚悟!と時代劇ばりに斬りかかってきた(いや、傘だから斬れないけど)クライサに幾らかツッコミを入れたくなったが、そんな余裕は無さそうなので内心で溜め息をつきながら左手を持ち上げた。
握った傘で振り下ろされたそれを受け止め、いなし、驚いた顔の少女の頭に叩きつける(もちろん手加減はして)。

「痛い!!」

「クライサ…とりあえず公衆の面前で喧嘩売るのはどうかと思うよ…」

少女は打撃を食らった頭を押さえて暫しの間唸っていたが、痛みが引いてくるとキッとこちらを睨み付け、覚えてろよ!との捨て台詞を残しレイの手をとって駆け出してしまった。
腕を引かれ前のめりになって走っていく少女が首だけで振り返り、困ったように笑うのを見てリオンも苦笑を返す。二人の姿が見えなくなって漸く、彼も目的地へ向かって歩き出した。

「……あ。あれってもしかして、クライサ・リミスクか?」

暴れ馬、と学年内で噂の。
となると、タメか、あれで。

大人びた印象のあるレイとは正直同い年に見えなくて、また苦く笑った。

後でメール、入れとくか。





十五秒の攻防







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