「レイちゃん、彼氏でもできたの?」

顔を上げると、いつもの微笑みを浮かべたレベッカと、なんだか表現しがたい顔で固まっている少年少女の姿が目に入った。

せっかくの三連休だから遊びにおいでよと誘われ、慣れたクライサの家に泊まって二日目。
クライサの姉や暇だから来たというエドワードを交えて、各々読書やゲーム、メールをしたりと少しの自由時間を過ごしていた時に、クライサお手製のクッキーを摘まんだレベッカが言い出したのだ。

「……なんで?」

「さっきから、楽しそうな顔をして携帯の画面を見ているから。そんな顔でメールする相手なんて、クライサ以外にいなかったでしょう?」

でしょう?とか言われましても。
そんな顔していたかな、と頬に触れつつ、もう一方の手で携帯を閉じる。
と、固まっていた二人が漸く動き出した。

「な、え、レイ、マジで彼氏できたのか!?」

「いや違うから」

「あら。じゃあメールの相手は誰なの?」

「え?この間の雨の日に、傘に入れてくれた人。話が合ったから、アドレス交換したんだ」

「女の子?」

「男だけど…」

あらあら、と楽しそうに笑うレベッカ。
なんだか気に入らない様子で頬杖をつくエドワード。
クライサだけが、何も反応せずに本に視線を落としている。

「別に、彼氏とかそんなんじゃ…」

「紅茶淹れ直してくるわね。あなたたちも何か飲む?」

「……じゃ、あたしも紅茶で」

「オレも」

「あたしコーヒー」

逃げられた。軽い足取りでキッチンへ向かった彼女の背に溜め息をつく。手伝いのためにエドワードも席を立ち、レイは残った少女に声をかけた。

「クライサ、どうしたの」

「……別に」

自然を装っているが、本を持つ手が震えているのを隠し切れていない。いっそわざとらしいぐらいに目をそらした。何かあったのは明白だ。

「クライサ」

「……この間の男と、ずーいぶん仲良くなったみたいだね。メールも楽しそうだし」

何もないわけないだろう、という意味を込めてもう一度名前を呼ぶと、いつもより少し低い声が返ってきた。彼女がこんな声を出すのは拗ねている時くらいだ。

「なに、やきもち?」

「べーつにー」

ふい、とまた本に視線を戻した彼女の唇が尖っているのを見つけて、頬を緩める。まったく、わかりやすいったら。

「心配することないのに」





いつだって一番は君







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