待ち合わせは午後1時、双方お気に入りの喫茶店。

その30分ほど前、クライサは待ち合わせの店から少し離れたコンビニにいた。傘を持たない身で先ほど降りだした雨を凌ぐためだ。
駆け込みついでに傘を買い、今日出たばかりの週刊誌を立ち読みしていると、ガラスの向こうに見慣れた姿を発見した。これから会う予定の彼女だった。

いつものクライサなら、ここで叩きつけんばかりの勢いで雑誌を戻し、すぐさまレイの元へ向かうのだが、今日は違った。クライサがと言うより、状況が違ったのだ。
彼女の睨むような視線の先には、レイの隣を歩く茶髪の少年がいる。
あたしのレイと相合傘なんてしやがってちくしょうめが。
広げた雑誌の陰で悔しさに唇を噛み締めると、隣で漫画雑誌を立ち読んでいた子どもがひっと声を上げて逃げ出した。

まあ、レイに限って彼氏なんてことは無いだろうし、大方親切心やら気まぐれやらで声をかけられて傘に入れてもらったというところだろう(正解)。
嫉妬するだけ無駄無駄、女の嫉妬は醜いぞ。
肩で息をして心を落ち着かせると、漸くしわくちゃになった雑誌を棚に戻し、こちらに向かってくる少女を迎えるべく出入口へ向かう。

自動ドアが開いた瞬間こちらに気付き、見せてくれた嬉しそうな笑顔に安堵した。
が、傘の少年に振り返り、礼と共に浮かべた笑みが己に向けられるものと変わらないと知って、クライサは愕然とする。

「クライサも傘買ってたの?」

「……うん…」

「?」

彼女の礼に微笑みを返して去っていった彼の姿が忘れられない。
けれど奴がいなければ、多分レイは雨に打たれながらやって来た筈だ、そういう意味では感謝しなければならない相手である。

「クライサ、あんまん買うんだけど、半分食べない?」

「……食べる」

複雑な思いを抱えたまま返すと、その答えに満足げに笑った彼女の姿に、忘れまいとしていた少年の顔など一瞬で掻き消されてしまった。





子供のような独占欲







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